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三叉路 〜three roads〜
【学園物 恋愛小説】

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報告-4

「……でもどんなに頑張っても、修の気持ちはあたしじゃない所に向いている。もちろん修はそんなこと一言も言わないし、あたしに対してはすごく誠実に付き合ってくれてるんだけど……。でも修を見てるとわかるの、あたしのことが好きじゃないって」


郁美は堰を切ったように溢れ出す涙を、手で拭いながら言った。


一方私は、金縛りにあったように動けなくなり、言葉も出せずにいた。


「修のことは今でも大好きだし、もちろん別れたくなかったよ。……でもいつまでも振り向いてくれないのに付き合い続けるのも辛くなってきたし、あたしのわがままで修を縛りつけるのも虚しくなってきて……」


「……だから、郁美から言ったの?」


ようやく出せた私の言葉に、郁美は小さく頷いた。


「多分、修はもう自分から別れるとは言わない。だったら、あたしが言うしかないでしょ」


郁美はガラステーブルの上に置いてあったティッシュを一枚とると、鼻をチーンとかんだ。


「あたしの話は、これくらいなんだけど……桃子の話はなんだったの?」


郁美は鼻をすすり、真っ赤な目で私を見つめた。


突然話を振られて、ギクッと身体が強張る。


郁美と土橋くんが別れるとは想定外だった。


それに自分から別れを告げたとは言え、郁美がまだ土橋くんを好きなのは痛いほど伝わってくる。


二人が別れたと言う話を聞かされた直後に、告白するつもりだったなんてとても言えない。


「…………」


私は言葉を失い、目を泳がせた。


さんざん何を言おうか考えて、やっと口に出した言葉が、


「……忘れちゃった。大したことない話だったし」


と言う、いかにもとってつけたようないい加減なものだった。


じっとこちらを見つめる郁美の大きな瞳は、そんな私の心の内を見透かすようにまっすぐだった。


やがて郁美は小さくフッと笑うと、


「それで、桃子に最後のお願いがあるんだけど」


と、人差し指で目尻の涙を拭いながら言った。


「最後のお願い……?」


心臓が早鐘を打っているのを感じながら、私は郁美の言葉を待った。




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