真相-5
「……と、いうワケだ」
ゼインはカリーの身体を柔らかいスポンジで洗いながらこれまでの話をする。
自分が魔物だという事も、酔っ払ってポロを抱いた事も全て。
カリーはそれをずっと黙って聞いていた。
濡れた黒い髪に、白い泡で飾られた浅黒い彼女の肌は、生クリームでデコレーションされた極上のショコラケーキのようだ。
この小屋はカイザス警備隊所有のもので、ケイがつてを伝って鍵を借りてきた。
ケイとポロはそこで待機してゼイン達が来るのを待っていたのだ。
拷問を受けて傷だらけであろうカリーの為に居たのだが、重症なのはスランの方だった。
カリーの方は痛めつけるのが目的だったが、スランは殺す目的でやられた傷だ。
根本的に狙う場所が違うので、スランが重症になるのは仕方ない。
ちなみに、同じ目的でつけられたゼインの傷は、ここに来るまでの間に綺麗に治った。
そんなワケで他人に対しても治癒能力が使えるポロと、多少の魔法が使えるケイがスランに付きっきりの治療をしている。
その間、カリーは安静に……と言われたのだが『汚いままじゃダメだ』と、ゼインに風呂に入れられているのだ。
「聞いてんのか?」
ゼインは返事をしないカリーの鼻に乗っかっている泡を指で掬って問いかける。
「えっと……私が暗殺者ってのは聞いた……のね?」
「うん」
「で?ゼインは魔物?」
「そう」
「ポロも?」
「そっちは可能性があるってだけ」
いまいち頭の中が整理できていないらしく、カリーは難しい顔をしている。
「やっぱ、ヒいた?」
苦笑して聞いたゼインの言葉に、カリーはバッと顔を上げた。
「引かない!引くワケないじゃんっ!だってゼインだもん!何も変わって無いじゃない!」
ムキになって言い返すカリーに、ゼインはパチパチと瞬きをする。
「ゼインこそ……引いたでしょ?」
「はあ?ヒくかよ?あんだけ自分に危害を加える相手に容赦ない女、暗殺者で納得……」
ベシッ
言葉の途中でカリーがゼインの顔にスポンジを投げた。
「悪かったわねっ」
ぶうっとふて腐れたカリーはやっといつもの彼女。
ゼインはクスクス笑ってスポンジをどかし、腕を伸ばしてカリーを抱きしめる。
そして、ゆっくりと息を吸った後、耳に口を寄せてそっと囁いた。
「やっと言える……好きだ、カリー」
その内容にカリーが大袈裟に反応して、腕を突っ張ってゼインを見上げる。
「嘘?!」
「お前な……嘘ついてどうするよ」
人の告白を台無しにするな、とゼインは顔をしかめた。
「だ、だって……キャラが好きなんでしょ?」
「はあぁ?!」
ガタンッ ガタガタ
ゼインが超間抜けな声を出したと同時に、外で何かが倒れて崩れた音がし、2人は何事だと音がした方を見る。