愛弟子-1
とある結婚式。今、花嫁が両親に向け感謝の気持ちを伝えているところだ。産まれてから今までの想い、感謝の言葉に会場は感動の涙に包まれる。そしてその感謝の言葉もいよいよ終わろうとしている。
「お父さん、お母さん、今までありがとう。これらは…」
言葉に詰まる花嫁。それは感極まっての事であろうか。参列者の殆どはそう感じた。しかし一部の人間はそうではない事を知っていた。
「これからは…武史さんと幸せな人生を歩んで行きます。これからも宜しくお願いします。」
会場は感動と涙と拍手に包まれた。
そう、海老川優里は武史と結婚をしたのであった。もともと隼人と婚約をしていた為、隼人ではない相手との結婚に驚きを隠せない人達は大勢いたが、素晴らしい式の雰囲気に祝福せずにはいられなくなる。
(アニキ、詐欺師だね〜!これじゃどこからみても爽やかなスポーツマンじゃん!)
(可哀想だけどしょうがないわ…)
(自分だけ幸せになろうなんて虫が良すぎるからね…)
優里の涙の意味を知る者達はそれぞれ胸に思う。本日めでたく湯島武史・優里夫婦が誕生した。
この結婚に関して、元婚約者の隼人が黙っているはずはなかった。しかし何故か現在行方が分からなくなっていた。何故か…。
式が終わり二次会、三次会をすませた。何も知らぬ優里の友人達は爽やかなスポーツマンタイプの武史に好感しか抱かなかった。二次会、三次会で一番人気だったのは…矢沢だった。
「オネーサン、携帯番号教えて下さいよ〜!」
「やだ〜、矢沢君、ナンパ〜?」
「ナンパじゃないですよ〜!お誘いしてるんです〜!」
「積極的ね〜!」
「ちょっと〜?矢沢君さっき私の番号教えたでしょ〜?もう浮気〜?」
「えへへ!」
お酒の入ったオネーサマ達に大人気の高校生、矢沢。凄いモテモテぶりだ。母性本能をくすぐる一方、心の中は既に野獣と成長している矢沢。
(今夜はこいつをお持ち帰りしようかな。誰だっけ?手島結衣か。オッパイデカいしエロいし馬鹿そうだからね。しかも相当酔ってるし。中に出しても覚えてねーだろ!あ、お持ち帰りじゃなくて、お持ち帰られ、か!)
今夜の獲物は決まった。あとは結衣に甘えて持ち帰ってもらうだけだった。そんな中、もえと真希は冷めた視線で夫妻と矢沢を見つめていた。