24 輝く石の国-5
本職の警備兵に引継ぎを終え、ナハトを厩舎に届けたカティヤは、今すぐベッドに突っ伏して眠りたいほど、くたびれていた。
宿舎まで、まともに歩けば十五分はかかるが、東庭を突き抜ければわずか五分だ。
最短距離で行こうと、植え込みや花壇に注意しながら、やや強引に宿舎を目指す。
こちらの方面はそれほど重要視されておらず、庭は警備兵もいない。
カティヤは独り、槍を片手に無人の庭をさくさく歩く、
庭のあちこちに外灯が立っているので、夜間であってもそれほど足元に不自由しない。
何より、よく晴れわたった夜だった。
滑らかな美しい黒に、今にも降り注いできそうな星々が無数に煌いている。
庭を半分ほど横切った時、ふとそれに気づいた。忙しさや張り詰めた警備の緊張で、余裕をなくしていたらしい。思わず足を止め、兜を脱いで小脇に抱え夜空を仰ぐ。
十分に美しい夜空だったが、飛竜の里の静かな夜では、もっと多くの星が見えた。
子ども時代、よく兄がバンツァーの後ろへ乗せてくれ、夜間飛行を楽しんだものだ。
ナハトより遥かに巨大なバンツァーは、怖いほど高くまで飛べた。
あの星々へ手が届きそうだとさえ思った。
成長するうち、宝石のような夜空の星は、思っていたよりずっと遠くにあると知った。
カティヤを魅了し、瞳をあげればすぐそこにあるのに、手に取ることは絶対に叶わない。
小さなため息を一つつき、夜空の鑑賞を打ち切った。
東庭を抜ける最後には、背の高い植え込みが壁を作っている。ここをすり抜ければ、宿舎の玄関だ。
向こう側に人の気配がしたが、ここで客や貴人と鉢合わせする心配はない。少々行儀が悪くとも、どうせ宿舎の騎士仲間だ。いつも互いにやっている。
植え込みの隙間を、ヒョイと抜け出た。
「!!」
思わずあげかけた小さな悲鳴を、寸でのところで飲み込んだ。
宿舎の玄関前にいたのは、有り得ないはずの二人……アレシュとエリアス。