最終話 新妻の目覚め-12
その頃。一人の男が新妻の新居に向かっていた。
紗希の夫、裕一だった。
「フフ……紗希のヤツ、こんな時間に帰ったらびっくりするだろうな」
この所、多忙であった裕一だったが、今日は予定が早く終わり、上司を勧めもあって午後から休暇と取ったのだった。
「最近、忙しかったからな。明日からの連休は紗希と二人でゆっくり過ごそう」
家に着いた裕一は、いつもと変わらない様子の我が家を見上げ、玄関の扉を開ける。
すると、見慣れない男物の靴が何足も脱ぎ捨てられてあった。
「ん?何だ、誰か来ているのか」
怪訝に思いながら中に入り、リビングを覗く。だが、そこには人気はなかった。
「おい、紗希」
キッチンやバスルームの方に声を掛けても反応がない。
二階かと思い、階段に向かうと、上から人の気配がした。
階段を上りながら、人の気配がはっきりと認識できた。
寝室からだった。
なぜか、裕一は忍び足になっていた。
寝室の引き戸をソッと開け、中を覗き込む。
ベッドの上に得体の知れない、大きな塊が置かれているのが目に飛び込んできた。
その塊は、ウネウネと蠢いていた。
塊の周囲は浅黒く、中心だけが真っ白なのが印象的だった。
最初、それが何なのか、裕一は直ぐに理解できなかった。
「アンッ!ダメ……スゴイ……」
どこか、聞き覚えのある声が裕一の耳に届く。
紗希?
瞬間、裕一の脳は、目の前の物体が人間の体であることを理解した。
それが三人、いや四人の人体であることを。その中の一人が妻の紗希であることを。