☆☆-6
14時。
外はむせ返るような暑さだ。
陽向はかんかん帽を被って湊の隣をチョロチョロと歩いた。
湊は無言だ。
何も話さず歩いていると、まためまいと吐き気に襲われ、陽向はその場でしゃがみ込んだ。
「どーした?」
「気持ち悪い…」
「大丈夫か?ほれ、家まで連れてってやるから」
湊は陽向の前にしゃがんだ。
広い背中に抱きつくと、視界がスッと高くなった。
「ごめんね…」
「謝んなよ」
マンションに着き、ベッドに寝かされる。
なんだか変な汗をかいてしまった。
全身がじっとりと濡れている。
「まさか倒れるとは思わなかったわ」
「あたしだって…思ってなかったよ。てか1人で帰れたのに…。なんで来たの」
「倒れたお前を心配しないわけねーだろーが。…どこまで心配かけんだよ。心臓持たねーよ」
湊は弱々しく笑うと、陽向の身体に薄手のタオルケットをかけた。
「身体疲れてんだよ。自分の限界もわかんねーのかアホ」
「アホって言うなバカ!」
「口だけは達者だな。寝てろ」
寝てろと言われなくても寝たい気持ちでいっぱいだ。
陽向は湊の手を握りしめて頬に当てて目を閉じた。
「ごめんね、湊。…ありがとう」
「ゆっくり休めよ」
陽向はそのまま底なし沼のような深い深い眠りに落ちた。
陽向はそのまま朝まで目覚めなかった。
8時に起きた時には、湊が隣で眠っていた。
てか、洋服のままで寝てるし!
化粧も落としてない!
陽向はバスルームに向かうと、汗でびしょ濡れになった身体を綺麗に洗い、リビングに戻った。
「体調へーきか?」
湊も起きたようだった。
陽向を心配そうな顔で見る。
「うん、いっぱい寝たから良くなった」
「確かに死んだよーに寝てたな。つーかお前、実習始まってからちょっとしっかりしたよな」
「え?そう?」
「何か、顔変わった」
「どこが?」
「凛々しくなった」
「あはははは!何それ!」
この実習で自分がまさか先頭に立って何かをやるとは思わなかった。
仕切るのは得意ではないし、いつも二番手の立場だった。
会議などでも、やっても書記だし。
いつも人にくっついていたそんな自分を焦らせたあのグループはヤバイのだと、地域実習を通して実感した。
奈緒たちが言っていたヤバイの意味をやっと理解した。
そんな実習も残すは在宅のみとなった。
在宅実習ではあのグループから更に分かれ、少人数となる。
昨日の発表会の後にグループの紙が渡されたのだが、優菜と一緒だと知り陽向は愕然とした。
また丸投げ決定だ。
不安すぎる…。
でも、今の自分ならやれそうな気がする。
体調なんか崩している場合じゃない。
「明日の予習しなきゃ」
陽向はバッグの中からプリントを取り出して早急に取り掛かった。
湊が隣に来て陽向をじっと見る。
「なにっ?」
「ちょー珍し。明日は地球滅亡だな」
「めちゃくちゃ失礼なんだけど!あたしだってやる時はやるの!」
陽向がムッとした顔をすると、湊は陽向の身体を後ろから抱きしめた。
「あ…。な、なに……」
「ずっとこーしたかったのは、俺だけ?」
「えっ」
「ぶっ倒れるまで無理すんなよ…」
湊は陽向をきつく抱きしめて呟いた。
「そんなに身体強くねーんだから、ちゃんと考えろよな。マジほっとけねー」
「大丈夫だよ。これからは気をつけるから」
突然、湊の唇が耳をとらえる。
「…っ」
「…てか具合悪いのに、こんなことしてる場合じゃねーか。悪い」
湊は弱々しく笑うと、陽向から離れた。
おとといは約束をすっぽかして、昨日は倒れて、湊との約束を守れなかった。
我慢してるのかな…。
してるよね…。
でもやらなきゃいけないこといっぱいあるし、セックスなんてしてしまったら、疲れて動けなくなるのが目に見える。
でも……。
「湊…」
陽向はソファーに座る湊の前に膝立ちになり、ぎゅっと抱きしめた。
「どーした?」
その言葉を無視し、唇を重ねる。
ゆっくり、激しく舌を絡めていく。
湊をソファーに押し倒すと、肩を掴まれた。
「陽向…?」
いつも受け身の陽向の突然の行為に、湊は困惑を隠し切れなかった。
「今日は…」
こんなこと言うの恥ずかしい。
陽向は顔を真っ赤にして湊から視線を逸らした。
「あたしがしてあげる…」
「…え?」
湊は陽向の頬を両手で挟み「ホントに?」と言った。
コクッと頷くと、湊は少し照れ笑いした。
我慢させてごめんね。
あたしのせいでごめんね。
でも、湊に気持ちよくなってもらいたいの…。
陽向は再び唇を重ね、湊の頭を抱きしめた。
湊もそれに応えてくれる。
キスをしながらスエットに手をかけ、下着も一緒に下ろす。
既に固くなったそれを手で優しく愛撫し、先走りを擦り付ける。
「…あ」
湊は陽向のシャツの下から手を滑り込ませブラのホックを外すと、直に胸を触り始めた。
互いの息が上がり始める。
唇が離れると、湊はソファーに座り、スエットと下着を放り投げた後、陽向の上半身も露わにした。
いきり立ったものを、裏筋から丁寧に舐め、唾液で濡らす。
卑猥な音が部屋に響き渡る。
「っあ…気持ちい…」
湊の甘い声が、鼓膜を刺激する。
敏感な部分を舌で刺激すると、湊は目を閉じて声を漏らした。
どんどん大きくなっていくそれを、夢中で愛撫する。
先端を舐めながら激しく扱く。
「ひな…ぁ……もっと…」
湊の色っぽい声に、脳が痺れる。
綺麗な腹筋を優しく撫で、乳首に触れる。
「んっ…」
湊は陽向の髪を撫で、快感に浸った。
時々、湊を見上げる。
目と目が合う。
「めちゃくちゃ気持ちい…」
吐息混じりの言葉に胸がキュンとなる。
陽向は恥ずかしそうに微笑んだ。