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It's
【ラブコメ 官能小説】

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☆☆-5

それから4時まで奮闘し、帰宅したのは4時半を過ぎた頃だった。
フラフラしながらお風呂に入り、ベッドに入ったのは5時過ぎ。
爆睡する湊の隣で、陽向も死んだような眠りに落ちた。
ここ1週間、僅かな睡眠でもやっていけるほど神経が研ぎ澄まされている陽向は、8時にしっかり目覚めた。
まだ元気だと思っているのは頭だけで、身体が悲鳴を上げていることに陽向は気付いていなかった。
準備を済ませて学校へ向かう。
「おはよー!陽向、なんか目腫れてる?」
席につくなり、ひとみに笑われる。
「そう?寝不足かなー…あははー」
4時までやってたからねー、と言ってやりたいが、嫌味ったらしくなるのが嫌だったので言えなかった。
「てか発表者決めてないから今さっと決めちゃおうよ。原稿もあるから。読めばいいだけだから」
「あっ、ちょー忘れてた!いやー、でもここはやっぱり陽向は外せないよねー」
「え」
何も手伝わなかった上に発表まで丸投げ?
疲れのピークが来ている今、すぐにイライラしてしまう。
「ジャンケンで決めようよ」
「えー!だって、質疑応答とか何も答えらんないしぃ。あとは、山ちゃんと絵美ちゃんも結構関わってるからその3人でよくない?」
「ちょっと待てよ!金井と佐山何もやってねーじゃん!」
浩太の言葉にひとみが怒り出す。
「こっちは通うのも大変だっつーのに!それに、あたしが出たところで発表めちゃくちゃになるのが目に見えるんですけど!」
「読めばいいだけだっつってんだろ!そんなこともできねーのかよ!てか佐山も出ろよな!」
「あ…あたしは…。今日喉痛くて、上手く喋れないかもだから…」
優菜の発言にみんな黙った。
多分、こいつもうダメだ、と誰もが思ったと思う。
「…分かったよ。やればいーんでしょ、やれば!」
ひとみは渋々了解した。
陽向は質疑応答のために出ることになり、発表はひとみと浩太がやることになった。
間もなくして発表会が始まり、ついに陽向のグループの発表の番になった。
USBと原稿を持って立ち上がると、ありえないほどのめまいに襲われ、目の前が真っ暗になった。
…あれ?
陽向は通路にフラフラと倒れ、気を失った。
「え?ちょ…ちょっと!陽向!」

ここ、どこ?
目を開くと「陽向?」と声が聞こえてきた。
「あ…」
ぼやけた視界の先には楓、奈緒、千秋が心配そうな顔をして立っていた。
周りを見渡す。
多分、医務室だ。
「あ…あれ?発表会…」
「ばか!もう終わったよ」
終わった?
嘘でしょ?
「陽向をここまで追い込むとかありえない!なんなのあいつらは!」
奈緒が本気で怒っている。
なんなんだ、この状況は…。
「ひな、頑張りすぎだよ。あれ全部1人でやったんでしょ?疲れが溜まってたんだろうって先生が言ってたよ。ご飯ちゃんと食べてる?」
千秋が泣きそうな顔をして言う。
「先生褒めてたよ。陽向たちのグループの発表資料、来年の参考にしたいって」
楓が嬉しそうに陽向の顔を見て言った。
先生に褒めてもらえたんだ…。
頑張ってよかった。
でも、グループの評価なんだろうな。
あたしが作ったのに…とちょっとひねくれた考えが頭を過る。
「てかさぁ!!!」
奈緒が大声を出して近くの棚を蹴った。
何何何何何何何何何何何!?
怖い!
「ありえないんですけど!非協力的にもほどがあるでしょ!倒れるまで陽向にやらせるとか本当にありえない!ちょームカつく!陽向はなんも思わないわけ?ガツンと言ってやりなよ!」
奈緒は人情にかなりアツい人なので、友人を傷付けられると本気で怒り、相手をコテンパにするまで気が済まない。
確か去年は、千秋の悪口を言っていたグループの子を泣かせていた。
「いいよ…もう終わったことだし。また来週から実習あるし…もうちょっとで終わるからさ」
「は?そんなんでいーの?陽向は優し過ぎなんだよ!損だよ損!優しくもなくて、自己中に生きてる人間の方がのうのうと生きてることに何も思わないの?!あたしだったら許せないね!」
「……」
「平和主義なのはいーけどさ、辛いのは自分だよ?てか言えないなら言ってやるよ!誰?金井ひとみ?」
「いいよ!やめてよ奈緒…」
陽向は部屋から出ようとした奈緒を止めようと、ベッドから立ち上がった。
また、めまいに襲われる。
「ひな、寝てな…」
千秋が陽向の身体を支える。
奈緒は怒りが冷めないといった感じで終始イライラしていた。
「来週の実習行けそう?」
「うん、大丈夫だよ。明日休めば元気になるよ」
しばらく話していると、ドアをノックする音が聞こえた。
「お、来た来た」
楓がそそくさと立ち上がり入口に向かうと、湊が姿を現した。
「へっ?」
「さっき連絡したの。ひなちゃんを連れて帰ってちょーだいって」
楓がニヤニヤしながら言う。
「1人で帰れるよ…」
「倒れたくせに強がってんじゃねーよバカタレ。帰るぞ」
「……」
ニヤニヤする3人に見送られ、陽向と湊は医務室を後にした。


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