そして、最後の夜-5
僕は慌ててパジャマのまま夜風の冷たい外に飛び出した。爺ちゃんも一緒に出て来た。
確かミフユの家はこっちの方だ! 僕が走って行くと向こうから悲鳴が聞こえた。
夜の暗闇に目を凝らすと、こっちに向かって逃げて来る真奈美さんの姿が見えた。
その背後からおぞましい巨大なものが追いかけて来る。髪を振り乱した恐ろしい形相のトリツキが長い腕を伸ばして真奈美さんを捕まえようと追いかけて来る。
「よーーくーーもーーじゃーーまーーをーーしーーたーーなーー」
僕の背後から爺ちゃんが叫んだ!
「ミツル、真奈美ちゃんを抱きしめろ!」
僕は真奈美さんと正面からぶつかると、彼女を仰向けに押し倒して上から覆い被さった。そしてスカートをめくり上げると、股の間に腰を入れた。
「よーーくーーもーー「まなみさん、今度は僕が君を守る!」」
「とーーりーーこーーろーーしーーてーー「ミツル君!」るーー」
トリツキは真奈美さんの頭を鷲づかみにしようとするけど、僕が邪魔でできないでいる。
すると爺ちゃんがお経を唱え始めた。
「観自在菩薩 行深般若……」
お爺ちゃんのお経はだんだん大きくなり、最後は叫ぶように怒鳴るように声を枯らして続けた。
するとトリツキは僕の髪の毛を一本抜いた。なんて言ったかわからない。
トリツキは僕の見てる前で大蛇の体をくねらせて苦しんで逃げて行った。
結局僕たちは真奈美さんを家の近くまで送ってあげた。
それ以来僕は爺ちゃんの村に行ってない。爺ちゃんが死んだときも行かなかった。