海老川優里の最後の笑顔-6
「湯島、もう来てるかなぁ?」
「私達より遅かったらブチてしょ?湯島の分際で。」
もえと真希はしっかりと優里を連れて来ていた。
「この道って…」
「フフフ、懐かしいね。湯島をいじめながら帰ったよね、よく。」
その道は中学の時の通学路だった。
「えっ?中学に行くの??」
「うん。どうせならねぇ…、昔みたいに教室で虐めた方が楽しいじゃん?」
「だ、だって…入れるの…?」
「今さぁ、ほら、同級生だった野中君がここの教師してるのよ。だからお願いして鍵借りたのよ。生徒や教師は19時には誰もいなくなるみたいだから私達の貸切よ?」
「そうなんだ…。」
あまり乗り気ではない優里。
「なんか昔と逆だね。」
「えっ?」
「昔は今の私達みたいに優里が先頭に立って湯島を虐めに行ってたじゃない?」
「そ、そうだけどぉ…」
足取り重く2人についていく優里。
(私はもう虐めなんかしないだなんて言わせないわよ?あんたが巻いた種なんだから責任だけはとってもらわないとね。)
まさか今から自分がレイプされるだなんて夢にも思っていないであろう。まして親友のもえと真希がレイプに加担しているなどと思いもする訳がなかった。
「アハッ、いたよ湯島!」
校門の方を見ると暗闇に浮かんだ人影が見えた。
「湯島君…」
複雑な気持ちだった。自分がした事を思うと顔を合わせるのがとてもつらかった。しかしどんどん近づいていく2人の後についていく優里。心が苦しくなってきた。
「湯島!エレーじゃん!私らより早く来てるなんてさ!」
「お、押上さんや西山さんに怒られるから…」
「やぁだぁ!そんな事じゃ怒らないよ〜!」
笑いながら頭を叩く。
「痛っ…」
「フフフ、優里〜、全然変わらないでしょ、湯島。あの時のままよ。見てるだけで苛々する。」
「ひ、久し振り…湯島君…。」
「え、海老川さん!」
あからさまに怯える。
「…!」
自分を見て怯える湯島がショックだった。
「相変わらずナヨナヨしてブクブク太ってオドオドして…ホント苛々するわっ!」
優里の頭の中に少年時代の武史が浮かぶ。もえが言う通り変わらない湯島武史だった。
「ほら行くよ!私のあ・そ・び・あ・い・て♪」
もえと真希に連れられ歩く湯島武史。いや、湯島武史役の男だった。今の湯島武史を知らない優里には分からない事であった。