思い出-2
「修〜、補習終わったらオレんち遊びに来ねぇ?」
土橋くんの友人の声が耳に入ると、私は肩をビクッと震わせた。
恐る恐る視線を右の方にずらすと、友達と楽しそうに話す土橋くんの姿が見える。
一番窓際の前から二番目の私の席と、一番廊下側の前から3番目の土橋くんは、席は離れているものの、バッチリ補習クラスが一緒になってしまったのである。
「あちゃー、土橋も同じクラスだったのかあ」
歩仁内くんはしまった、という顔をして私の方を見た。
……あちゃーなんて思ってないくせに。
さっきのわざとらしいくらい大きな声で私に話しかけてきたのだって、土橋くんの存在に気付いていたからだろう。
歩仁内くんに生徒会室で話を聞いてもらったあの日から、彼はやたらと私に話しかけてくるようになった。
たぶん、私の事情を知ったからには無下にはできないのだろう。
ただ、気になったのはその距離の取り方。
彼が人懐っこくて、誰にでもニコニコ振る舞うのは以前からわかっていたけど、どうも私に対してスキンシップが行き過ぎているような気がした。
話をするときにはポンと肩を叩くことから始まり、話をしているとやたら腕やら手やら触れてきて。
それも移動教室や全校集会などで、土橋くんと顔を合わせやすいシチュエーションの時にだけ、やたら馴れ馴れしいスキンシップをしてくる。
まるで、土橋くんに見せつけるかのように。
「歩仁内くん……。あまり気を使わなくていいからさ、それより“桃子ちゃん”はやめてくれる?」
「えぇ〜、だって“石澤さん”だとよそよそしいしいだろ? せっかく仲良くなったのに」
彼はそう言って私の肩をポンポン叩く。
歩仁内くんの声はやたらと通る。
まだ先生も現れてないから、教室内が騒がしいのが救いだった。
チラチラと土橋くんの方が気になって、時折横目で彼の様子を探るけど、彼は私のことなど眼中にないようで、友達と楽しそうに談笑していた。