自己嫌悪-4
「ただいま」
ゼインも追いついてポロの頭に手を置いた。
〈おかえり…なさい〉
パッと顔を上げてゼインを見たポロは、彼の暗い表情を見て声が小さくなる。
〈ゼイン?〉
首を傾げるポロから、カリーは身体を離してゼインに譲った。
地面に膝をついたゼインは、ポロの手を取って手首の枷を擦る。
〈どうかした?〉
ポロはゼインの手に自分の手を重ねて首を傾げた。
「……ゴメン……この枷は外してやれねぇや……」
多分、この枷は、ポロがゼインみたいに暴走しないように付けられているのだ。
「ゴメンな……俺のせいなんだ……」
〈?〉
ゼインは泣きそうな顔をポロに向けた。
「俺……」
ゼインが説明をしようとした、その時。
「カリオペ?!」
「ふぎゃっ?!」
いきなりゼインの言葉を遮ったのは、悲鳴のような声とカリーの驚く声。
度肝を抜かれたゼインとポロがカリーに目を向けると、髭面のオッサンがカリーの両肩を掴んで自分の方に身体を向けていた。
当のカリーは目を見開いて口をパクパクさせる。
(と、と、と、頭領?!)
カリーの所属していた暗殺集団『シグナー』の頭領が今、目の前にいる事実を受け入れ難いカリー。
「カリオペ!カリオペだな?!」
なのに、頭領はカリーの肩を揺らして何度も問いかける。
どうやって誤魔化そうかとガクガク揺れる頭の中をフル回転させるカリーの横で、ゼインが口を開いた。
「知り合いか?カリー」
(あ、バカ)
『脱色』してるし頭領だっていまいち確信が持ててないのに『カリー』なんて呼んだら『カリオペ』ですと言っているようなものだ。
「やっぱり!カリオペ〜探したぞぉ〜」
頭領は確信を持ってカリーをぎゅうっと抱き締める。
(あう)
ゼイン達から見えない位置、首に回った頭領の手の中にダガーがチラリと見えて、カリーは諦めて口を開いた。
「……パパ……」
「カリオペぇ〜」
(……わざとらしいわ……頭領……)
涙まで流してオイオイ泣きつく頭領に、カリーは呆れつつもその背中に腕を回してポンポン叩く。
そのカリーの手の中にもいつの間にかダガーがあるのだが、気づいているのは頭領だけだ。