自己嫌悪-3
「ほい。掛けときな」
ケイはブランケットを持ってきてポロの肩に掛けてやった。
すると、ポロがピクリと反応してちょっと爪先立ちになる。
〈……あ……〉
「お。帰ってきた?」
ポロの視線を追いかけると、道の遥か向こう側に人影が見えた。
向こうもこっちに気づいたらしく、大きく手を振っている。
〈カリー!ゼイン!〉
まだ遥か遠いのにポロは待ちきれずに走り出した。
肩に掛けたばかりのブランケットが落ちて風に煽られる。
「あ、ポロっ」
『ククッ(僕が行く)』
慌てて追いかけようとしたケイの肩からクインが飛び出す。
ケイは足をゆるめてブランケットを拾うと、両手を腰に当ててポロの後ろ姿を眺めた。
必死に走る様子がとても可愛らしく、微笑ましい。
(やっぱまだ子供だな)
性経験が豊富で年齢的にも大人だが、子供らしい事をしていないのでちょっとした所が幼い。
さしずめ今は、迷子になっていたら両親が迎えに来た、といった感じだ。
「ポ〜ロ〜!ただいまぁっ」
ポロと同じく走ってきたカリーは、ポロをガシッと抱き締める。
街を歩く人々も2人の様子に笑みを浮かべていた。
〈おかえりなさい。怪我は無い?お腹は空いてる?それとも、お風呂が先?〉
ぐりぐりと擦り寄るカリーに、ポロはもみくちゃにされながらもまくし立てる。
但し、一方通行。
「おかえり、怪我は無いかってさ」
のんびり歩いて来たケイがポロの言葉を一部通訳すると、カリーはキョトンとした表情を見せた。
「何か俺にはポロの声が聞こえるみたいだ」
「へぇ〜」
事情を説明するとカリーは笑顔でポロの顔を覗く。
「良かったねぇ、ポロ」
意志の疎通が出来るのは良い事だ、とカリーはポロの頭を撫でた。
〈はい〉
(ふぅん)
別れる前よりポロの表情が明るい。
カリーは少し視線を上げてケイを見た。
平凡な家庭の平和ボケした男にしか見えないが、ポロの心を解すにはこういう人間の方が良いのかもしれない。