『SWING UP!!』第12話-23
火がついてしまえば、燃え上がるのはあっという間だ。
「まーちゃん……まーちゃん……」
敷いた布団に、裸に剥いた清子の身体を横たえて、女らしさを増したその肢体を、岡崎は愛撫する。
「清子……キレイだ……」
「あ、ん……ホ、ホンマに……?」
「ああ……手が、止まらん……」
「ん、ふふ……あっ……ま、まーちゃん……あっ、あっ……」
八年前とは違う、豊かになった膨らみを、諸手で揉みしだく。その柔らかな感触を愉しむように、岡崎は、両手いっぱいに乳房を鷲づかみにして、パン生地のようにそれを揉みあげた。
「あうんっ……!」
身悶えさせる甘い愉悦に、清子は艶のある声を挙げる。それもまた、すっかり女らしくなっていて、重ねた年月というものを、いやがうえにも意識させた。
「ん、んんっ……」
唇を塞ぎ、呼吸を分け合う。当然、胸は揉んだままで。
「んふっ、んぅっ、んんっ、んっ、んっ……」
甘く乱れた息が、重なったところから行き来する。胸の柔らかさがポンプになっているように、それを揉む度に、甘さを帯びた熱気が口から逆流してきて、清子を愛撫している手に力が篭もった。
「ん、ふっ、あっ、ああんっ!」
たまらないように、清子が唇を離した。喉から声を零さなければ、呼吸がおいつかない。
それほどに、八年ぶりに受ける岡崎からの愛撫を、清子は愉しんでいた。
「あ、あっ……ま、まーちゃんの手つき……あ、あの、とき、より、やらしいで……」
「清子の、声もな……」
「あうんっ、み、みみは、あかん……あ、あかんって……あっ、んあっ!」
耳朶に口を寄せ、甘がみすると、清子は堪らないようにその身を捩らせた。
「ここ、弱いのは……変わって、ないな……」
「ま、まーちゃん、いじわるや……いじわるなの、かわって、へん……あっ、あっ……」
耳の外周をなぞるように、舌が上下する。“福耳”といってよい、大きな耳たぶを何度も舌で揺すぶり、口に含む。
「ひあっ……!」
耳を責めた時の、清子の反応は変わらなかった。それが、無性に嬉しいものだと、岡崎は思った。
岡崎にとって、初めてその生の肌に触れた女性は、当然ながら清子だ。あの、“伝説の告白”から、段階を踏むように触れ合いを重ねてきた二人は、交際一年を経たある夜に、キスと手つなぎ以外は、ほぼプラトニックだったその間柄に、終止符を打った。
海外文学の著名な研究者である岡崎の母親が、海外で開催されるフォーラムに招かれたため、1週間ほど日本を離れなければならなくなったことがあった。清子は、岡崎の母親にも気に入られており、しかも彼女は“留守の間、衛のこと、お願いします”などと言ったものだから、清子がそれを過分に意識して、通い妻のように毎日、晩御飯を作りにきた。
清子もまた、母子家庭で育った身である。看護師をしている母親は、職業柄、勤務時間が不安定で、そんな母親に負担をかけないよう、身の回りのことは早いうちから一通り、清子はできるようになっていた。特に料理は、清子が小学生だった時分から既に、母親から弁当を頼まれるぐらいに、自信のあるものだ。