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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第12話-20

 当時、1番打者であった岡崎少年は、清子に対して、2打数2安打、1ホーマーの成績を挙げた。清子の言うように、真剣に向き合った結果である。
 清子は、2回の途中までは、岡崎少年の本塁打による1点で押さえていたが、彼に2本目の安打を打たれたところから一気に崩れて、合計4失点で降板した。
 確かに清子は、女の子でありながら、リトルにいる控え投手の中では、頭ひとつ抜けた実力を持っていた。しかし、やはりというべきか、スタミナという点で、男子より見劣りするのも事実であった。
 だが、岡崎以外の主力選手を、打者一巡するまではしっかり抑えた点が評価され、清子は、“リリーフ専門の控え投手”として、ベンチ入りを認められた。当時のレギュラーメンバーは、世界大会にも出場した経験があり、おそらくは日本でも一、二を争う実力を持っていただろう。それを相手にした清子は、むしろ“4失点でよく抑えた”と言ってもよかったのだ。
 岡崎と清子の交流が深まったのは、その試合を境にしてのことだ。だが、まだ“野球仲間”同士だという一線は、越えていなかった。
 清子自身、岡崎のことは気にかかっていたが、女子として見られていないだろうと、最初から諦めの気持ちを抱いていたこともある。当時、リトル・リーグには、チームメイトの誰しもが憧れた“マドンナ”というべき美人のマネージャーが二人もおり、男子顔負けに活発なところのある清子は、仲間としては親しくされながらも、女子という点では全く見向きもされていなかったから、余計にそう思っていたのだろう。
 きっかけは、紅白戦から半年が過ぎ、二人が中学生になって、とある練習の合間の休憩時間での出来事だった。
 休憩中、戯れに、“女子ランキング”と称して、チームのメンバーたちが、無記名で女子の名を書き込んだ紙を集めて回っていたことがあった。清子は、“自分に、票なんて入らんやろ”と、始めから苦笑交じりに諦めを抱いていたし、自分のところにも紙が廻ってきた時点で、間違いなく選外だと思っていた。ちなみにその紙には、いつも優しくしてくれる、チームの監督の、奥さんの名前を書いておいた。
『清子にも、1票入っとるわ』
『えっ』
 案の定、ランキングは二人の美人マネージャーに票が集中していたが、1票だけ清子の名前が書かれていたものがあった。
『誰やろな?』
 物好きなヤツ、と、からかう気持ちが募ったのだろう。早速とばかりに、“これ書いたの、誰だ?”という声が上がった。ひょっとしたら、イタズラかもしれないと、誰もが考えていたのも、それを助長した。
『ああ、それ、俺だ』
 からかいを気にする風でもなく、いとも簡単に名乗りを上げたのは、岡崎だった。部室中が、驚きの声に包まれたのは言うまでもない。ちなみに、一番の奇声を挙げたのは、彼に票を貰った清子であった。
『まーちゃんの、アホ! 冗談、いわんといてや!』
『? 冗談なんかじゃないぞ?』
 本気で岡崎は、清子に1票を入れていたのだ。当時、見事なほどに朴念仁であった彼は、チームのメンバーがいるにも関わらず、堂々と自分が清子に票を入れたことを、白状していたのだ。
 騒がしさをいぶかしんだ、例の“Wマドンナ”二人の出現で、その“ランキング話”はうやむやになった。しかし、岡崎と清子が、チームメイト公認の“カップル”だという雰囲気が、すっかり出来上がっていた。岡崎は女子に人気があったから、清子とくっつくことで、“ライバルが消える”と考えていたチームメイトたちは、一様に、二人の接触を我が身のチャンスに置き換えて、それを“既成事実”にしようとしたのだ。


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