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続・天狗屋物語
【SM 官能小説】

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続・天狗屋物語(後編)-2

爺さんから話を聞いたのは、深夜にひどい雨が降り出し、早々に店を閉めたあの夜だった。

…ハルミがそんなことを言ったのか…ああ、確かにあのときだけは、オレはM男だったな…
今じゃ、信じられないかもしれないが…

もうずいぶん前のことだ…オレにはその頃、まだ最初の嫁さんがいた…天狗屋を始めた頃、
いっしょに暮らしていた女は二人目の嫁さんだ…

その最初の嫁さんの話だ…

ひとまわり以上も歳が離れた嫁さんは、ある会社の秘書をしていたが、オレはひと目見たとき
から、ぞっこん惚れてしまってな…オレにとっては遅咲きの恋ってとこか…何度か誘って
やっと口説き落として結婚した。オレにとっては、最初で最後の惚れた女だと思っている。

ところが、結婚して五年ほどたったときだった。オレが会社の役員に昇進したとき、オレの
嫁さんは、ある若い男と浮気を始めた…オレはそんな嫁さんの浮気を密かに知り、男甲斐もな
く嫉妬に狂った…。

結婚して初めてだったね…嫁さんと大喧嘩したのも初めてだった…嫁さんを問い詰めた…問い
つめれば問いつめるほど、オレはこの女にほんとうに惚れているんだなんて、あらためて思う
ようになったものだぜ…

そして、嫁さんは、その男と外泊することが多くなり、家に帰ってこなくなった。そんなにい
い男だったのかね…結局、嫁さんは、その男に捨てられ、首をくくって自殺さ…。


しばらく仕事に身が入らなかったね…嫁さんが死んだなんて、とても思えなかった。
そんなオレがたまたま入ったSMクラブが、老舗の「ルシア」だった…当時は、プレイルーム
付きの豪華なクラブとしては有名だったものだ…オレはSMなんて、その頃はよくわからない
まま、たまたまそこに出入りしていたある女だけを目当てに、彼女を追うようにその店に
入ったのさ…

その女が燿華というS嬢だった…似ていたね…死んだ嫁さんの若い頃にそっくりだったのさ…
オレは懐かしさで、ついつい入れ込んでしまったんだ…

…その古雑誌の写真のとおり美人で、スタイルもよかったね…からだつきまで嫁さんに、よく
似ていたものだ…燿華は、まだ、クラブに入ったばかりの新人で、鞭の使い方も下手なウブな
女だったが、死んだ嫁さんの面影をどこかに匂わせた女だった…

燿華は、新人だというのに人気があってね…なかなか指名することができなかったものだ…
オレは、最初はM男を演じていたような気がするが、燿華という女の前で跪きながら、自殺
をした嫁さんの面影を彼女に重ねると、ほんとうの自分になれたような気がしたね…

…えっ、なぜそんなことをハルミが知っているのかって…あいつは、そのとき「ルシア」で受
付をしていた女なんだよ…だから、オレはあいつが今でも苦手なんだ…まさか、あいつがここ
らあたりに住んでいるとは思わなかったね…葛城家の家政婦だって…ああ、ルシアをやめたあ
と、どこかで家政婦をやっていることは聞いたことがあるが、それにしても、ヨシエがそこの
お嬢様だったというのは驚きだな…


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