続・天狗屋物語(後編)-10
「…私って受付やりながら、燿華って新米の女にアゴで使われていたのよ…ほんとうに腹が
たつ女だわ…どんなことをしていたのかって…コスチュームの洗濯に、ハイヒール磨きに、鞭
や蝋燭の準備、それにプレイの後始末…ひどいときは、床に垂れ流した燿華のオシッコや客の
精液の掃除までやらされたわ…
…ジイヤが燿華に鞭で打たれて放出した精液も、私が掃除してあげていたのよね…ジイヤの
悶えたマゾ姿って見てみたかったわね…ジイヤって、今でもその話をすることを嫌がるのよね…
燿華ったら、私を付き人みたいに思っていたのね…彼女、少しばかり男好きのする美人だと思
って…ムカニク女だわ…私はルシアに長くはいなかったけど、私が店をやめた一ヶ月後に彼女
も店をやめたらしいわね…」
なるほど、そういうことだったのか…
ということで、ハルミおばさんは、燿華…いや、「谷 舞子」を手込めにして虐め抜くことに
並々ならぬ淫猥な意欲を見せていたのだ。
「どんな風に虐めるのかって…ええ、考えているわ…あの女を蛇桶に入れて、あそこの中を蛇
の頭でいやと言うほど掘らせ、豚とセックスさせて、最後は猿檻の中に裸で吊しておくのも
いいわね…」と、酒で酔ったハルミおばさんは、さらりと言い放つ。
おいおい、仕置き部屋は動物園じゃないぜ…よほど動物好きなのだろうが、女って恐いものだ
ぜ。それにしても猿や豚なんて、この都会のどこから連れてくるんだよ…オレは堀田に続き、
このおばさんを仲間にしたことを深く後悔し、首筋が寒々としてくる。
静まりかえった夜更けに、オレと爺さんは久しぶりに酒を飲んでいた。ときどき、店の前を
通りすぎる酔っぱらいが、奇声をあげるのが聞こえる。
オレのパソコンの画面に映し出された「谷 舞子」の写真を爺さんは、さっきから感慨深く
眺めている。
「いい女になったな…あの頃の面影が懐かしいもんだぜ…」と、爺さんが独り言のようにポツ
リという。
「やっぱり自殺した最初の嫁さんに似ているのか…」
「いや…わからない…わからなくなったな…この写真を見ると、オレは何となく死んだ嫁さん
を無理に思い起こそうとしているんだな…でも、燿華はやっぱり燿華だ…オレの嫁さんとは違
う…」と言いながら、爺さんは缶ビールを片手に持ったまま、煙草に火をつける。
燿華…いや、谷 舞子がこの店に来たときに爺さんに声をかけていたら…と、オレは少し後悔
している。爺さんは、いまでもこの女の面影の中にある、自殺した最初の嫁さんのことを考え
ているのだ。
そのとき、ふと、爺さんの優しさを垣間見たような気がした…。
「爺さん…ほんとうにいいのか…二週間後には、谷 舞子を誘い出し、廃寺の仕置き部屋に監
禁して、とことんやるんだぜ…今回は、堀田とハルミおばさんが仲間だから、何をするかわか
らないぜ…」
わかっている…爺さんは迷っているのだ。爺さんが惚れていた最初の嫁さんによく似た燿華…
今の「谷 舞子」という女…
爺さんは煙草を咥えたまま、いつまでも、じっと天井を見つめていた。