リビドー-3
いつしか会話も途切れがちになり、二人して画面をぼんやり眺め始める。
逃げまどう壬生柚香を、三人のいかにも頭の悪そうな若者が追い詰めていく。
途中から見出したドラマはさっぱり状況が呑み込めなかったものの、彼女が映っているだけで釘付けになってしまう。
白いブラウスに黒いタイトスカートが、薄汚れた廃墟にやけに不釣り合いで、妙に色っぽかった。
やがて、息を切らした彼女の足がピタリと止まった。
その顔は絶望に満ちていて、大きく潤んだ瞳が差し込む月明かりに照らされ、ゆらゆらと揺れている。
『ほら、行き止まりだぜ』
笑いながら近付く男達を、恐怖におののいた顔で見た壬生柚香は、ふるふると小さく首を横に振りながら、ズズ、とその場にしゃがみ込んだ。
いつの間にか画面を凝視していた俺は、生唾を飲み込んで、汗ばむ手を握りしめていた。
――なんだ、この感じは。
壬生柚香の恐怖におののいた表情を見た瞬間、身体中を巡る血が煮え立つような感覚に襲われたのだ。
決して、壬生柚香に感情移入してのことではない。
いや、むしろ彼女を追い詰めていく男の一人になったかのような高揚感をハッキリと感じていたのだ。
そう言えば、小さな頃から俺が胸を高鳴らすのは、このドラマのように、女が悪党に捕まるシーンばかりだった。
悪党に捕らえられた女は、ロープで縛られ身動きを取れないまま震えている。
怯える女に近付く悪漢。破かれていく服。
小さな頃に偶然見てしまったドラマの内容が蘇る。
悪漢は泣き叫ぶ女の服をひん剥いて、襲いかかっていく。そのシーンを観た時、へその下辺りがモゾモゾと渦巻いていったあの感覚は忘れられない。
幼いながらに想像したこの先の展開に、ワクワクしてしまう自分がいた。