第四章 淑女墜落-5
「張元さん、気にしないでください。奥さん、時間を無駄に使いたくはないでしょう? いいから早く張元さんのほうへお尻を向けて四つん這いになりなさい」
「ああ……でも私……」
「正直なところ、まんざらでもないんでしょう?」
大村が嫌な顔で笑み、意味深に言う。
「そ、そんなことありません! 私は、私は本当に……」
「私も張元さんもとっくに気付いてますよ、あなたにはMの気があるってことをね」
「そっ-――!?」
反発したかったが、美優はその口を弱々しく噤んだ。
絶対に認めてはいけないモノ……それは常識ある人間として決して受け入れるわけにはいかない感情と感覚だった。
でも美優は、知らぬうちにそれを認めてしまっている自分に気付いていた。
自身の中で激しく葛藤が続き、それは今もなお変わらない。
その如何わしいモノを、自分の心と身体に芽生えてしまったモノを、大村たちだけには絶対に悟られたくなかった。
(み、見透かされている……?)
下唇をキュッと噛んではすぐにパッと離し、美優は絶望感に打ち拉がれながらスウッと頭を垂れた。
「やれやれ、あいかわらず手間のかかるお人だ……」
大村が鼻でフンッと笑い、膝立ちで美優の側へ寄っていく。
「ほらほら、こっちも段取りってもんがあるんだから、もっと積極的にテキパキと動いてもらわないと」
大村に肩を掴まれ、強引に腰を持ち上げられ、美優は口惜しさに涙を浮かべながら四つん這いの姿勢を取った。
カチャ、カチャカチャ-――
背後から聞こえてくる不気味な器具音。
美優にとって、この間がもっとも死にたくなるような瞬間だった。
浣腸し、強制的に排泄され、その様を見て愉しむ大村達……絶対に理解出来ないであろう男達の嗜好が、美優にただならぬ恐怖心を植えつけていく。
だがそれは大村達だけに対するものではなく、強要される変質的な行為を次第に受け入れ始めつつある自分に対しても、同じよう恐怖を湧かせていた。
「奥さん、あなたの美しさは犯すたびに倍増していってるようだ……。旦那さんにも言われないかね、最近とても色っぽくなったと?」
大村が低い声で言いながら、ガバッとワンピースの裾を捲くり上げる。
そして、張元の前に美優の豊満なヒップを丸出しにさせてから、華奢な背を上からグッと押さえ込んだ。
「あ、ああ……」
「ほっほう、このムチムチ加減、見れば見るほど男好きする尻ですな〜。げへへっ、ワシの粗チンが早くも反応しとりますぞ」
ガラス管にチュルチュルと薬液を吸い上げながら、張元が下品な笑い声を上げた。
閉じられた両脚はスラリとして何とも華麗だが、丸見え状態で突き出されているヒップは女の濃厚な色香をプンプンと漂わせている。