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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-9

 “梧城寺”という女子選手のスイングを見て、心中穏やかでなくなったのは、大和もそうだった。と、言っても、色事方面ではなくて、純粋に、これから対峙する中での“脅威”を感じたということだ。
「あの選手には、“スパイラル・ストライク”は通用しない」
「!?」
 大和の断言に、隣に座る桜子が絶句していた。“かもしれない”が、始めから存在していないそれは、彼にその確信があったからだろう。
「打たれちゃうって、こと?」
 確かにあのスイングなら、“スパイラル・ストライク”の球筋にもアジャストしてくるだろうから、油断は出来ないと思うが…。だが、“通用しない”となると、話は大きくなってくる。
「いや…。投げても、完璧な“スパイラル・ストライク”にならないと思うんだ」
 大和は自分の考えに、補足を加えた。
「あの選手の体格だと、“スパイラル・ストライク”が決まる角度が、普通の打者にとっての“内角の真ん中”に近くなる」
 だから、肝心の“球威”が不完全な状態になるというのだ。
「かといって、“スパイラル・ストライク”を普通に投げても、ボール球になってしまうだろうね」
「なるほど、そっかぁ」
 150センチ級の選手は、おそらく、“隼リーグ”でもあの女子選手しかいないだろう。小柄な選手には威力が減退するという、“スパイラル・ストライク”の意外な弱点に、桜子は、むぅ、と可愛くその唇を尖らせていた。

 キィン!

「おっ」
「あっ」
 豪快なスイングで振られた“長尺バット”から、痛烈な打球が右中間に飛んだ。低空の弾丸ライナーが、瞬く間にバウンドを重ねてフェンスに激突する。
 打者走者である“梧城寺”という女子選手は、小柄な体格ながら猛然としたスピードでベースを駆け抜け、一気に三塁までたどり着いていた。
「すごい…。なんて、エネルギッシュで、パワフルな選手だ」
 桜子をそのまま圧縮したら、あの女子選手みたいになるのかもしれない。そんな埒もないことを、大和は考えてみるが、それほどに走・攻にパワーの満ち溢れた選手であるのは、間違いのないことだった。
(それにしても…)
 一方、その桜子は、電光掲示板を見遣っている。そして、法泉印大学のスターティングオーダーを、改めて確認してみた。

【法泉印大学】
1番:大 仏(二塁手・2年)
2番:東 尋(左翼手・1年)
3番:天狼院(投 手・3年)
4番:梧城寺(捕 手・2年)
5番:能 面(一塁手・2年)
6番:仙 石(三塁手・3年)
7番:伏見坂(右翼手・3年)
8番:伊地知(中堅主・2年)
9番:独楽送(遊撃手・1年)

(読めない名前の人が、多い…)
 法泉印大学は、僧侶養成機関の“学寮”を母体とした、仏教系私立大学である。設立の歴史は相当に古く、また、主に東日本を中心として、“実家がお寺です”という学生たちが、数多く所属している。
 もちろん、現在は“仏教科”だけではなく、古い歴史を持つがゆえに、“史学”と“考古学”にも力を入れている。双葉大学とは、似たような色合いを持つ大学ともいえる。
 特殊な苗字の学生が多いのも、特徴と言えるだろう。
 ちなみに、上記のスターティングオーダーを、ひらがな表記に変えると、以下のようになる。

1番:おさらぎ
2番:とうじん
3番:てんろういん
4番:ごじょうじ
5番:のーまん
6番:せんごく
7番:ふせみざか
8番:いじち
9番:こまおくり

(読めませんってば)
 桜子が誰に呟いたかはわからないが、アナウンス泣かせのオーダーであることは、間違いないだろう。


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