『SWING UP!!』第11話-65
“法泉まつり”が開かれている商店街周辺の界隈は、自動車の通行が広範囲で規制されている。
「ほいじゃ、ここで降ろさせてもらうよぉ」
“事務の西出さん”が、四人を降ろしたのは、通行の規制が入る直前の、商店街の入り口付近であった。
「この道を真っ直ぐ行けば、20分ぐらいで“泉水神社”に行けるよぉ」
「「「「ありがとうございました」」」」
「ほいほい」
絵に描いたようないい人である“事務の西出さん”は、再び車を走らせて、“安広寺”の近くにある、事務所へと戻っていった。
「結構、人通りがあるね」
桜子が、周囲を見回しながら言う。
自分と同じように、浴衣を身に付けた女子が行き交っており、男女ペアのカップルになっている姿もあれば、女子同士で固まって、かしましくしている集団もあった。地元の女学生グループなのだろう。
「お祭りって、雰囲気だよねぇ」
桜子もまた、その空気に乗せられて、楽しげであった。
「さて、どうしよっか?」
「僕は“泉水神社”に参詣したいな。他にも“縁の地”があるらしいから、いろいろと見てみたい」
大和は、“法泉まつり”の中心になっている神社群を詣でて、この祭りの由来などを確かめたいと思っている。“歴史好き”の一面が、早速、頭をもたげているらしい。
「じゃあ、あたしたちは、“おまつり探検”だね」
大和の行く先が、自分の行く先だと考えている桜子は、それにすぐさま同調した。最終の目的地が“泉水神社”であり、そこに至るまで各地に散らばる“縁の地”を見て回ろうという。
「結花ちゃんたちも、一緒に来る?」
「やだなあ、桜子センパイ。わたしたちに、“お邪魔虫”になれっていうんですか? 謹んで、遠慮させていただきますよ」
“ねえ?”と、隣の航に目配せをする結花。“当然”とばかりに、航は無言のまま、深く頷いていた。
「じゃあ、ここで別れるとして……帰りは、どうする?」
合流するか、そのまま別行動を取るか。それは、はっきりさせておいたほうがいいだろう。
「時間を気にしないように、それも別々にしましょうよ」
大和と桜子が、ゆっくりと二人だけの時間を過ごせるようにと考えれば、自ずとそういう結論に達するというものだ。
「じゃあ、二人とも、気をつけてね」
時間は夕方を間近に迎えていて、傾いている太陽の日差しは、徐々に赤みを差し、空の向こうに月を朧に浮かべて、夜の帳の準備を始めている。
桜子と大和は、しっかりその手を取り合って、行き交う人の流れに乗るように、先を進んでいった。