『SWING UP!!』第11話-27
『………』
それを鼻腔に感じ取りながら、響はしかし、一気呵成に自分の体から出て行った衝撃的な排泄の感覚に、頭の中が真っ白になっていた。
無意識のまま、響はようやくしゃがみ込む。拭き紙を手に取って、お尻を拭こうと“肛門(ア*ス)”に触れたとき…、
『う、あっ……ゃぁっ……!』
痺れるような快感が“肛門(ア*ス)”から駆け巡り、小学生だった頃に“カンチョー”を食らった瞬間の心地よさを、刹那的に思い出した。
『お、おかしい、よ……ひびきの……ウ、ウ*チの、穴……あつくて……ひびき……へんだよぉ……!』
そこから先は、夢中になって、拭き紙ごと中に入れた指を動かし続けた。
『ひ、ひびき……ウ*チのでる穴で、いやらしいこと、してる……だめなのに……こんなの、だめなのにっ……!』
性教育が始まっていたので、自分のしている行為の意味も、おぼろげながら理解していた。それでも、指は止められなかった。
『あ、ああぅぅっ!!』
やがて、“粗相”をした瞬間のときよりも、強い衝撃が響の全身を包み込んだ。頭の中が真っ白になり、太股の内側が熱くなった。ヌルヌルとした感触が股間に生まれ、糸を引いて垂れ落ちていった。
『………』
それが、響にとっての、初めての“肛門自慰(アナニー)”だった。その後、情けなさと恥ずかしさを抱えながら、汚してしまった床を綺麗にしたが、その日一晩中は、“肛門自慰(アナニー)”の感触を忘れることが出来なかった。
「ん、くぅ、あ、あっ、んぅっ……!」
今でも夢に見ることがある、衝撃的な“初体験”。それを反芻しながら、響は、拭き紙ごと“肛門(ア*ス)”に突き刺した指を更に強く激しく蠢かす。
ぐにゅ、ぐにゅ、ぐにゅ、ぐにぐにぐにぐに……!
「ひぅっ、ひぃっ、ひぁぅっ……!」
ポタ、ポタ、と股間に息づく“花の操”から、糸を引いて垂れ落ちる淫蜜。しかし、その部分には一切手を触れることなく、響は“肛門自慰(アナニー)”に夢中になっていた。
「はやとにぃにぃ、はやとにぃにぃ……!!」
幼い頃の呼び名で、慕う人の名を唇にのせる。いつか彼に捧げるその“花の操”を、響は“神聖なもの”として、絶対に性的に触れようとはしなかった。
「う、ううっ、く、くぅあぁぁっ……!」
その代わりになるものが、“肛門(ア*ス)”なのである。
突き出した尻の中央で、妖しく蠢くその指使いは、とてつもなく淫猥で倒錯した様を現出していた。
「あ、あ、おかしくなっちゃう……! おかしく、なっちゃうぅ……!!」
頭の中が白濁としてきた。“肛門(ア*ス)”から込み上げる刺激が、全身を這いずり回って、股間に集中してくる。それはそのまま、垂れ落ちる淫蜜となり、真下のオガクズに滲み吸い込まれていく。
「ウ、ウ*チの穴で……ウ*チのでる穴で、ひびき、おかしくなっちゃうぅぅうぅぅぅぅ!!」
ぐにゅぅ、と奥深くに指を挿入して、鉤詰めのようにそれを曲げ、ぐり、と回転させた、その瞬間だった。
「うあっ、あっ、あああぁああぁぁあぁぁっっ!」
響の中で、火花が弾けた。身体が反りあがり、股間の媚肉が盛り上がる。
ぷしゅっ、ぷしゃっ、ぷしゃぁああぁぁっっ!!
「あ、あうぅ……」
その盛り上がりの中心から、金色の飛沫がほとばしった。淫蜜と同様、それもまた、真下のオガクズに音もなく滲み吸い込まれていく。水洗式とは違って、尿が水を打つ音が一切しないのも、“バイオ・トイレ”の特徴であった。
「………」
“肛門自慰(アナニー)”による絶頂が収まり、響は我に返る。拭き紙を尻から離して、それを真下に落とす。やがてそれもまた、バクテリアによって分解されて、有機土壌となることだろう。
(また……こんなこと、して……)
客人が宿坊にいるにもかかわらず、排泄から始まる倒錯した昂ぶりに身を任せてしまった。煩悩の塊と言うべき己の痴態に、響は身震いを抑えられない。
「にぃにぃ……」
それは救いを求める声だったのか。
「はやとにぃにぃ……はやと、にぃにぃ……」
何度もその名を呼ぶ響は、“東司”の入り口にある人の気配に気づかないまま、萎れた“菊の花”の後始末を始めたのだった。