夏の1日と彼の優しさ?-8
「…見つけたか?」
「ううん…棗も春香も見つからない」
二人して入り口付近できょろきょろと辺りを見回すも、見えるのはカップルや家族連ればかりで目的の3人が見つからない。猛は困ったように頭を掻きながらここにいても仕方ないと踏んで美咲に提案をした。
「待ち合わせの時間はまだだけど、こんなんじゃ見つけるのは無理かもしんないから中に入ろう」
「え?でも…」
「ここで待ってても行き違いになるか見つけるのに時間食うだけだと思うぞ」
「…じゃあ先に入って待ってるの?」
「その方がいいだろ。オレの携帯防水だから嵐士と連絡取れれば大丈夫なはずだ」
そう言うなりその場でスライド式の携帯を取り出しその場で嵐士に電話をかけた猛。数コールで出たのか、美咲は話始める二人の会話を聞けないながらも聞き耳立てて聞いていた。
「あ、オレだけど。今上代さんともういるんだけど人多くてさ」
『ああ、ごめん。俺らちょっと遅れそうだからちょうど電話しようと思ってたんだよ』
「そうか。…ん?もしかして3人一緒か?」
『棗の親父さんがいい人で今車で送ってもらってんだけど渋滞してんだ』
「そういうことか。じゃあオレは上代さんと先に入って待ってても大丈夫だな?」
『そうしてくれ――あ?上代に?――悪い、櫻井が上代に代わってくれって』