夏の1日と彼の優しさ?-6
「ううん。そんなことないから」
言い訳をせずに謝る猛に、美咲は苦笑いしながらそれを許す。潔いのは悪いことじゃないけど、それでも自分のせいじゃないことで謝る猛に美咲は好感が持ててくすっと笑みを零した。
猛の前で初めて零した美咲の笑みに、猛は前髪の奥で目を見張った。転入してから何かと猛の世話をするようにあの白衣の担任に頼まれて時々会話をした時も美咲はいつも眉を顰めるか、表情を崩すことがなかった。だから猛は自分が美咲に嫌われているか、間違っても友好な関係を築くのは難しいと思っていた矢先に見た美咲の笑みだ。学年1と名高いその容姿が自分に向けて綺麗な笑みを向けている、それだけで猛は心臓を鷲掴みにされるような感覚を味わった。
さらに美咲はそのプロポーションを惜しげも無く晒すノースリーブのワンピース着ているので大きさも形も申し分ない胸の谷間を見下ろす形になっているのだ。美咲の笑みとそのアングル、自分の視界いっぱいにそれが映ったことで猛の下半身に熱が集まってきてしまうのは仕方ない。
なるべく美咲を見ないように顔を背けた猛はこれ以上下半身に熱がいかないように、会話せざるを得なかった。
「そ、そういえば上代さんてか弱くはないんだろ?あんな奴どうってことないだろ」
「まあ、そうだけど…こんなとこだと周りの人たちに迷惑かかるし」
歯切れ悪く答える美咲に猛はああ、と納得した。
嵐士や他の人から聞いた話だと美咲は色々と身を守る術を持っているらしい。
「確か…柔道弐段、空手黒帯だっけか。合気道もやってるって聞いたけど」
「あ、うん。それ全部本当だね」
「確かにこんなとこで無理に撃退すんのは…難しいか。やっぱり悪かったな」
「下鷺君のせいじゃないよ。気が緩んでた私にも責任あるから」