夏の1日と彼の優しさ?-5
「―――っ!」
美咲が耐えてるのをいいことにエスカレートしてきた男の行為。気持ち悪くて少しでも逃げようと身を捩る美咲だけど軽く揉む度にその形を変えるほど柔らかく張りのいい美咲の尻を堪能した男は、そのまま調子にのってその手を少しだけ下げる。そしてついに男の指が水着越しに美咲の秘部に触れ、美咲はとうとう我慢ならず強引に首だけ振り返ってその男の手を掴もうとした瞬間、今まで美咲に触れていた男の手の感触がふっと急に消えた。
驚くのもつかの間、その感触がなくなった瞬間誰かが強引に男と美咲の間に体を割り込ませたのが分かった。
「…おい」
そして聞こえてきたのは、聞き覚えのある男の声。
「人の連れに何やってんだ」
だけど、美咲が知ってるその男は美咲が知らないくらい低い声で相手を威嚇する。次の瞬間、美咲に触れていた男のものだろううめき声が聞こえてきた。
「次見つけたら容赦なくその指一本ずつ折ってくぞ」
そこまで大きな声じゃないのにもかかわらず、ドスが効きすぎたその声に美咲は思わず恐怖で肩を跳ねさせた。
もう言うことはないのか、それ以上男は威嚇する言葉を出すことなく美咲と向き合うようにもぞもぞと体を動かした。そして美咲の顔の横に両手をつき、美咲を庇うようにする男の顔を見て美咲は困惑気味にお礼を言う。
「い、一応ありがと…下鷺君」
そう、美咲を痴漢の手から守ったのは猛だった。
「…いや、遅くなって悪い」
美咲のお礼に謝る猛だが、転入してきたばかりの猛はクラスメイトの使う駅や電車を把握してるわけがない。たまたま見知った顔を見つけ、その人が痴漢をされていると気づいてもそうすぐに駆けつけることは出来なかった。事実、猛は美咲が声を出す瞬間まで助けられなかったのだけど、猛はそれを言い訳とせず素直に助けるのが遅くなったのを謝ったのだ。