夏の1日と彼の優しさ?-30
「あっ、やっ…ちょっそんなとこ触りながらする話じゃないでしょっ!」
と、女子特有の艶っぽい会話が交わされる中、先に着替え終わっていた男陣は男子更衣室と隣り合わせの女子更衣室の近くの壁に寄りかかっていた。
「…なあ、猛」
「…うん?」
「あいつら、多分入口の近くで着替えてんだろうけどさ」
「そうだろうな」
「微妙に会話が聞こえるって分かってやってんのかね…」
「…そうじゃないだろうけど、耳に酷だな」
「耳だけか?」
「……ノーコメント」
と、男子特有の嬉しいのか悲しいのか分からない会話が交わされていた。真顔で耳だけかと聞く嵐士に猛が目を逸らしたのは、そういうワケで。
とにかく女陣を待っているとようやく着替え終わった3人は微妙な顔で待っていた男陣と合流してそれぞれ帰路につくことになった。
春香、嵐士、棗は迎えに来た棗の父親の車で。そして美咲と猛は同じ電車へ。
「美咲、こっち」
電車に乗るなり猛は唐突に美咲の腕を引いてドア近くの角まで押しやって、自身はその前に立ち塞がるような位置を取った。その立ち位置に首を傾げた美咲だけど、すぐに痴漢対策だと分かってそれをすんなり実行する猛に感心していた。
「そういや美咲どこで降りるんだ?」