夏の1日と彼の優しさ?-26
「春香!」
医務室を出てすぐの場所に待っていた3人を見つけ、美咲は小走りで駆け寄った。
「美咲っもう大丈夫なの?」
「うん。ごめんね」
「いいのよ、美咲が無事なら。それよりあんたが泳げないの分かってたのに目を離すなんて…私も気が緩んでたのね」
顔を俯けながら言う春香に、美咲は眉を顰めて複雑そうな顔をした。今日は元々楽しむために来たのだから多少浮かれたとしてもそれは誰が咎めるべきではない。春香は美咲がそんな筋違いを本気で怒る訳がないと分かっていることを理解しながら美咲が春香のせいとは言えずに眉を顰めたのは、自分の唯一といってもいい弱点のせいでこんなことになったからだ。
しかし、転入したばかりの猛がそんな事情を知るはずもなく。
「…美咲、泳げないのか?」
「まあ、ね…昔っからだけど」
しかめっ面で機嫌悪そうに言う美咲に、猛は意外そうに声を漏らした。
そんな猛と美咲以外の3人は同時に目を見開き、猛と美咲を交互に見ては驚きを隠そうともしない。
「お、おい猛…」
「ん?…なんだよ、その顔」
「いやだって、お前…今上代のこと名前で呼んでただろ」
「あー…」