夏の1日と彼の優しさ?-24
猛が罪悪感を抱いてることを瞬時に気付いた美咲が声のトーンを少しだけ落とすと、背を向けている猛の肩がビクっと跳ね冷や汗をだらだらと流し始めた。
「…だから、私の言うことを一つだけ聞いて」
「な、なんなりと。本当に反省してマス…」
ぎこちないその口調に、美咲はそっと苦笑いを零して一つ深呼吸をした。そして猛のパーカーを強く引っ張りこっちを向くように仕草で強請る。
「ん…?」
振り向いた猛は、気まずい雰囲気十分に美咲を見つけ小さく首を傾げた。そして美咲は猛を見上げ微笑みながら言葉を紡ぐ。
「もう一回、言って」
「へ?言う?何を?」
「私の名前」
「……?」
「さっき美咲って呼んでくれたでしょ?」
「は……っ?!」
美咲のとんだ発言に、猛はたじろぎ開いた口をパクパクを開閉させた。猛の動揺からするに、さっき美咲の名前を呼んだのは無意識らしいと気が付いた美咲は小さく溜息をつきながらついっと体を前傾させて未だたじろぐ猛の顔に自分の顔を近づける。
「ねぇ、呼んでよ」
「あ、いやっその…それはちょっと…」
「…嫌なの?さっきなんなりとって言ってたよね?まさか反古する気?」