夏の1日と彼の優しさ?-23
「上代さんが溺れた時、水を飲んでたから人工呼吸したんだ」
「え……?」
猛の言葉に、美咲は目を見開いた。
意識してなのか無意識なのか、さっき「美咲」と呼んだ呼び方が元に戻っているのに気が付いたから。そしてそれに気付いて思わずどうして?と寂しくなるような気持ちに駆られた自分自身に戸惑っていた。
「あ、だから怒らないか聞いたんだけどあんなことした方が怒られるよな」
「……そう、だね」
「…ごめん。こんなんじゃあ、ああいう男達と同じだな」
「そっ――!」
そんなことない!そう叫びたくてもさっきから制御出来ない自分の気持ちに戸惑い言葉にすることが出来ない。そんな自分が歯がゆくて、悔しくて美咲は一度顔を俯け大きく深呼吸してとにかく心を落ち着ける。
そして未だこっちを見ない猛の背中に手を伸ばし、パーカーを少しだけ摘まんだ。
「か、上代さん…?」
「違うよ、下鷺君は違う。あんな男達と一緒にしないで」
「や、でも…」
「私を何度も助けてくれた下鷺君は違う。これだけは言えるよ」
「…上代さん?さっきまでオレがしたことは…」
そこまで言って猛は罪悪感から口を噤む。
「確かに…ちょっとだけ怒ってるよ?」