夏の1日と彼の優しさ?-19
それを見た美咲は息を呑み、嵐士はいつもと様子の違う猛に眉を顰め棗と春香の腕を引いて多少強引に医務室を後にする。
「ちょっと、清水?」
腕を引かれ医務室から出され春香は訝しみ嵐士の腕を振り払って睨みつけた。
「まあ、少しくらい2人きりにさせてやろうや」
「でも美咲ちゃん大丈夫かな…?」
猛の様子が違うのは2人も分かっていたのか、春香はぐっと言葉に詰まり棗はただ心配そうに医務室のドアを見るだけ。
一方医務室の中では。
起き上がった美咲が猛をベッドに座らせ医務室の消毒液を使って猛の手の手当てをしていた。最初、猛は美咲がベッドを降りることを止めたのだけど手当てをしたいという美咲の願いに渋々折れたのだ。消毒液を猛の手の甲につけると傷に染みたのか小さく呻く。
「…ごめん」
「え?」
「私のせいだよね…気を緩めないように気を付けてたのに」
きゅっと唇を噛みしめ、猛の手を労わる美咲。そんな美咲を見て、猛は思わず空いてる手で美咲の頬に触れ顔を上げさせた。
「違う。上代のせいじゃない」
「え…今…」
いつものように「上代さん」ではなく「上代」と呼ばれたことに美咲は驚くが、それを気にした様子もなく美咲の頬に触れたまま猛は言葉を続けていく。
「また遅くなって悪い。今度こそちゃんと守ろうと思ってたのに…」