夏の1日と彼の優しさ?-18
「あー…あいつは何と言うか…」
「…もしかして、私のせい?」
顔が少し青ざめ、らしくもなく弱弱しい言葉を吐く美咲に嵐士を始め他の2人も目を見開いて驚いた。美咲がここまで感情を制御出来ないのは珍しい。それを見て嵐士は美咲の額を押さえゆっくりを横たわらせた。
「あいつは野暮用だと」
「でも…」
「ただのトイレだろ?すぐに戻ってくるさ」
「でも!相手は3人なのに!」
やっぱり気付いてたか、と嵐士は舌打ちしたい気分になった。美咲達がプールで遊んでる間、嵐士は美咲が数人の男に絡まれて手ひどく追い返された話を猛から聞いていた。そして嵐士は猛が美咲を助けるためにプールに潜った瞬間、こっちを見て嫌な笑みを浮かべながらその場を離れて行った数人の男を目撃している。嵐士にそれを聞かずに出て行ったあたり猛もその男達には気付いていたのだろう。
「心配すんな。猛なら大丈夫だ」
「そうよ、美咲。今は大人しく寝ていなさい」
「私も春香に賛成だよ。きっと下鷺くんはすぐに戻って来るって」
3人の必死の宥めに、美咲はようやくベッドで大人しくする選択を選んだ。もぞもぞとベッドに深く入り、眉を顰めて猛を待つ。美咲がそう決めた瞬間医務室のドアが開いて猛が戻ってきた。
「下鷺く…!」
急いで上半身を起こし、猛の無事を確認しようとした美咲の目に映ったのはほとんど怪我のない猛の体。ただし、握り込まれている片方の拳だけ甲が赤く濡れていた