夏の1日と彼の優しさ?-17
「あのバカ…まだ呼び方変わったまんまだったな」
「あ、嵐士。行かせていいの?」
棗の心配そうな声に嵐士は溜息をつきながら答えを返さなかった。嵐士は猛が美咲の呼び方が変わっているのに気が付いていた。そして、短い付き合いの中で猛が一番心を乱していることにも。
それでも、何故あそこまで猛が怒っているのか理解しきれない嵐士に猛を止めることは叶わない。嵐士は美咲のそばでただただ意識が戻るのを願っている春香と、そのそばで春香のことも心配している棗と一緒に猛の帰りを待つことしか出来なかった。
***
それから数十分後。
「ん…」
ようやく目を覚ました美咲が最初に見たのは、見覚えのない天井。ゆっくりと目を開けながら美咲はどうして自分がここにいるのかを思い出して…そして勢いよく上半身を起こした。
「美咲!急に起きちゃ駄目よ!」
「春香…私、プールで溺れて…」
「美咲ちゃん、それより今は休んでた方が」
「おっ目を覚ましたのか。大丈夫か?上代」
美咲は辺りを見渡し、3人を見つけ安堵から小さく息をついた。だけど、一人足りないことに気が付いて目を見開きベッドの上で言葉で嵐士に詰め寄る。
「清水!下鷺君は?!」