夏の1日と彼の優しさ?-13
「何のためにって…まあ、遊びに?」
「遊んでねぇじゃん!パーカー脱いで言えよ!」
ガウっと噛みつくように言う嵐士に猛は顔を逸らし聞かぬ振りをする。その2人を放って女3人はすでにプールへと向かっていた。それを見て、嵐士はそれ以上猛に文句を言うのを諦め皆の荷物を見るように言って同じようにプールに向かう。
学年1美少女の美咲と、それに劣らぬ容姿の春香、2人には少し劣るかもしれないけどそれでも可愛い部類に入る棗達が仲良く遊んでいる姿は嵐士や猛を始め周囲にいる人達の目の保養となっていた。
「おい、上代。これ必要だろ」
「あ。ありがと」
嵐士は思い出したように言いながら、その手に持つ浮き輪を美咲に手渡し美咲は心なしか安堵したようにそれを受け取る。
「意外と準備がいいのね、清水」
「まあな、ってどういう意味だよ、櫻井」
「嵐士は意外と優しいんだよ?」
「棗…フォローになってねぇんだけど…」
「事実は事実だよ、清水」
「上代お前…浮き輪返せこの野郎!」
トドメを刺すように春香や棗にしれっと賛同した美咲についに怒った嵐士が浮き輪を奪い返そうとその手を伸ばし、その手から逃れるために無駄のない動きで嵐士の後ろをとった美咲が笑顔で嵐士の背中を蹴ってプールへと落とす。そんな2人を見て、棗は苦笑いしながら嵐士を追ってプールに入り春香は上品に、だけど思い切り笑っていた。