夏の1日と彼の優しさ?-12
元々そこまで暴力的な性格じゃなかった美咲が変わり始めたのは中学2年生の頃。あの容姿から察するに実に多数の告白を受けていたけど、美咲はそんな男達の告白を手ひどく拒絶してきたらしい。あまりの手ひどさに周りが手を焼くも、全くその姿勢を変えずむしろその厳しさがエスカレートしていくと振られた男の何人かが逆恨みで色々と陰湿なことを受けていた。いじめ、暴行、エトセトラ…しかし美咲はそんな男達を暴力一つで黙らせ、恐怖でその心を縛り付けた。今ではその暴力を受けた男の何人かがMに目覚め密かに親衛隊を作るほどに。痴漢に会えばその腕を捻り上げ足を強く踏みつけて憤怒の言葉を並べていき、友達に不埒なことをしようとする男には自ら首を突っ込み同じように暴力で片を付ける。
美咲が何よりも嫌っているのは、女に対し暴力的で非道的な男。そしてそんな男には容赦なくその体で痛めつける。ただし、女子供にはそれが嘘かのように接してるらしい。
猛はその話を聞いて、ただ目を伏せていた。
「よう、遅くなったな」
会話一つせず物思いに耽っていた猛は不意に聞こえてきた嵐士の声に顔を上げた。
そこには、猛と同じようにハーフパンツの水着を着て浮き輪を持っている嵐士、黒を主に白いフリルをあしらったビキニを着る春香、薄いピンクのワンピースタイプの水着の棗がいた。
「というか、お前ら何でそんなとこでのんびりしてんの?」
冷めた雰囲気の中でお互いアイスティーを飲んでいる猛と美咲を見て嵐士は溜息をついた。楽しんでて、と言ったはずなのにプールに入らず猛に至ってはパーカーすら脱いでない。
「いや、だってオレプールに入るつもりないし」
「春香達来るまで待ってたんだけど」
しれっとした顔で言う2人に、3人は思わず言葉を失くしていた。
その中で、嵐士は律儀に猛の言葉を反芻して目を見張る。
「いや、ちょっと待て。上代の言葉は分かるが猛、お前は今何言った?」
「ん?だからオレはプールには入らん」
「何でだよ!お前何のためにここまで来たんだよ!」