嫉妬-10
「桃子にはホント感謝してる。あたし、もう大丈夫だから。これからは無理して修と話したりしなくていいよ」
「……え?」
突然の郁美の言葉に私は頭がついていけず、間の抜けた顔で彼女を見つめた。
郁美はそんな私に苛立ったのか、
「だから、桃子はもう修と口をきく必要はないってこと!」
とやや強い口調で言い放った。
私がびっくりして固まっていると、郁美はやや小さな声で話し始めた。
「あたしね、男の子の友達の電話番号とかアドレス全部消したの。修とやり直せるなら男友達なんて必要ないし。それにあたしは女子高だから、男の子と関わらなくできるしね」
「郁美……」
「でも、修は違う。共学だし、今日みたいに桃子や桃子の友達と楽しそうに話してるの見て、悔しかった。あたしの知らない修を知ってる桃子がズルいって思った」
郁美はフッと小さく笑ったがその目は笑っていない。
私はその表情を見た瞬間、背筋に悪寒が走った。
「でも、そんなこと修に言えないでしょ。だから桃子、またお願いなんだけど……桃子の方から修と友達やめて欲しいの。あんたと修が縁切れたら、あんたの友達とも疎遠になるだろうし……」
おそらく、沙織が土橋くんに近付くのが嫌だと感じたのかもしれない。
「さ、沙織は彼氏がいてすごくうまく行ってるから大丈夫だよ……」
「じゃあ、桃子は大丈夫じゃないの?」
私はギクッと体を強ばらせた。
咄嗟のことで反応できない私を見て、郁美はクスリと笑った。
「……やっぱねぇ。男の子が苦手な桃子があんなに楽しそうに話したりしてるから違和感あったんだよね」
郁美はベッドから立ち上がって私を見下ろした。
てっきり沙織のことを疑っているとばかり思っていた私は、郁美の問いをうまくやり過ごせなかったことに、内心舌打ちをした。