密会-1
〜第8話〜
定時で退社し、すぐに帰る気になれず会社近くの公園のベンチに座り、昼間の向井さんの会話を思い出してました。
「はぁ、またカッコつけてしまった・・何が妻をよろしくだよ。強がりやがって」
自分で自分を罵倒する俺。向井さんに負けたくない気持ちがまた悪い方へと働いてしまいました。
「さぁ、どうする・・」
冷静になってもう一度考えてみる。向井さんにあぁは言ったものの、こっそり妻に行くなと言えば妻は間違いなく断るだろう。別に向井さんにバレる心配もない。
そして妻は俺がこのまま何も言わなければ、明日、向井さんに抱かれるはず。
昨日の見送りの時に話した内容を聞いた時に嘘をついたのが何よりの証拠。
もし二度と向井さんに抱かれたくないのなら、俺に正直に話したはずだ。
即答しなかったのは俺に対する遠慮があり迷っているのだろうが、ほぼオッケーに傾いていたはずだ。
問題はそこではなく、俺自身がどうしたいかだ。
徐々に目覚め始め、日に日に強くなる寝とられ願望。妻がまた向井さんに抱かれ、乱れる。
想像しただけで股間は熱くなる。この年になるまで気付かなかった自分の変わった性癖に戸惑っていました。
散々迷いましたが、男が一度口にした事は守ろうと思い、妻を引きとめるのもやめ、
自分の気持ちに正直に。再び妻が向井さんに抱かれる方を望みました。
心の整理をつけて自宅へ帰ると、「おかえり。今日もご苦労さまでした」と妻の出迎え。
美味しそうな料理の匂いと妻の笑顔に一日の疲れが癒される気分です。
「ただいま。今日の晩ご飯はなにかな?」
普段と変わらない会話をしながらスーツを脱ぎネクタイを外しシャツを脱ぐ。
「先にシャワーを浴びてくるね」
「はぁい」
究極の選択を迫られた妻とは思えない程普通の態度。断ったのか?
そんな事聞ける筈もなく俺も普通に接する。一緒にテレビを見て似たようなとこで笑う。
どこにでもあるような夫婦の生活。
そろそろ寝ようかと、一緒に寝室へ。以前は週1だった夜の生活も向井さん効果で増えたとは言え、毎日する体力もなく、最近は火・木と土曜か日曜が営みの日となっていました。
ですが、「愛してる、おやすみ」は毎日欠かす事無く。「私もよ。愛してる。おやすみなさい」軽く唇を重ねて寝るようにしてました。
火曜日。
遂に運命の日を迎えました。朝から妻の様子を伺っていますが、特に変わった様子がありません。もう決意したのか、断ったのか・・向井さんからも連絡がないので後者ではないはず。
いつもと変わらず挨拶を交わし、出社しました。
俺を見送り、一人になった妻。
後片付けも済ませ、束の間の休息。お茶を飲みながら携帯を見つめる。
もし俺にバレればどうなるかわからない。
でも、もう一度向井さんに抱かれてあの感覚を味わいたい。気持ちよすぎて、頭が真っ白になり自分が自分でなくなる感覚・・俺以外の男に抱かれて、感じてはいけないと思えば思うほど、燃え上がる身体。
向井さんの目、声、指・・そして熱い肉棒。答えは始めから決まっていた。
携帯を手に取り、向井さんに電話をする妻。
プププ・・プルルル・・
「はい、向井です。奥さんからの電話をずっと待ってました。
早速、返事を聞かせてもらえますか」
妻は少し震えた声で「今から・・会って頂けますか?」と一言。
「わかりました。嬉しいですよ。すぐに迎えに行きます」
「はい」電話を切り、携帯を握りしめる妻。
「博くん、ごめんなさい。私はダメな妻です。許してもらえなくても構いません。
博くんの事愛してるけど・・身体が求めるんです」
寝室に今も飾ってある結婚式の写真の俺に向かって謝る妻。
胸を強調するようなピンク色の薄手のセーターに白のスカート姿で、向井さんが来るのを待っていました。
仕事の合間に何度も携帯を確認するが、メールも着信もない。
妻は断ったのか?向井さんが連絡を忘れたのか?
そんな事を考えていると、向井さんからメールが来ました。
「奥さんから連絡があり、今から迎えに行きます」
メールを見た瞬間、心臓の鼓動が大きくなるのを感じました。
覚悟はしていたものの、心の底では妻は断るだろうと少しの可能性に賭けていたのかもしれません。俺に何も告げずに妻は今から向井さんに抱かれると思うといてもたってもいられず、しばらく仕事も手につきませんでした。
インターフォンが鳴り、玄関を出るとスーツ姿の向井さんが立っていました。
「奥さん、今日も素敵ですね。また逢えて嬉しいですよ」
恥ずかしそうにハニカミ人目が気になるのかすぐに助手席に乗り込む妻。
それを察してすぐに車を走らせる向井さん。
「奥さん、今日も本当にキレイですよ。博之くんには相談したのかな?」
「いえ、主人は何も知りません。私が自分で決めたんです。今回は賭けの賞品でもありません」
「嬉しいですよ。一度だけのつもりが・・また奥さんとこうして逢えて」
小さな声で「私も・・です」と、返す妻。
すぐに向井家に着き、もうどこに行くかわかっている妻は向井さんの後を追うように、
麻雀部屋へと行きました。
部屋へ入るなり、戸も閉めずに後ろから手を回し抱きつく妻。
「私はふしだらな女です・・主人に内緒で・・いえ、知っていたらいいと言うわけではあえせんが、どうしても向井さんの体が・・忘れられないんです。
私の体が・・求めてしまうんです」
「嬉しいですよ。奥さんみたいに若くてキレイな方にそう言ってもらえて、私なんて見た目がこんなですからね、モテた記憶なんて全くありません」
「そんな。奥様もキレイじゃありませんか・・」
「そうですね。家内が私をこうしてくれたのかもしれません」
と、少し会話をしながら、ある物が気になりキョロキョロする妻。