THANK YOU!!-4
マンション21階。
そこの一番奥にある部屋が瑞稀の借りている部屋。結構な広さがあり、一人暮らしには勿体無いファミリー向けの部屋。家具も元々揃っていたモノを活用している。
瑞稀は物欲があまり無い為に、生活用品などの必要最低限な物しか買わない。
それにも関わらず、あちらこちらにシンプルな部屋に似合わない様々なグッズが見受けられ、初めて部屋を訪れた拓斗がこれらはどうしたのかと聞くと冷蔵庫を漁っている瑞稀は苦笑いして、オーケストラの仲間が良く持ち込んでそのまま置いて行くのだと言った。
恐らく、善意でやっていることなので瑞稀も要らないとは言えないのだろう。
恋人の変わらない人想いさに、拓斗は優しい笑みを浮かべた。
まだキョロキョロと部屋の中を珍しげに見渡す拓斗に、作る物が決まった瑞稀はキッチンから顔を出し、
「拓斗。座って待ってて?」
とだけ言った。声のトーンからして、苦笑い。
そう言われてしまった拓斗は渋々持っていたお泊り用のスポーツバッグを置くと、リビングの高さが無いソファに座った。
適当にテレビでも見てて良いよ!と声をかけられ、前に置いてある小さなガラステーブルの上にあるリモコンを手に取って電源ボタンを押した。
すると、丁度ドラマの終盤のようで、臨場感あるシーンが画面に映る。
しかし英語がそこまで理解出来る訳ではない拓斗は、怪訝な顔を時々しつつもドラマを見切った。
エンドロールが流れ始めた頃。瑞稀が二つの皿を手に持ってリビングに来た。
慌てて、自分の分もある二つの皿を受け取り、テーブルの上に乗せた。
皿が置かれたことを確認すると、瑞稀は飲み物を取りに再びキッチンへ。
拓斗がテーブルの上に置いた皿を見ると、湯気がふわふわ立つオニオンスープ仕立てのパスタ。綺麗な色が、食欲をそそる。
「美味そうだな」
「これはあまり失敗しないんだって。お兄ちゃんに教えて貰ったんだ」
3年前に帰った時にねー。と笑いながら麦茶の入ったグラスを二つ持ってくる。
これは瑞稀がテーブルの上に乗せた。そして、拓斗の横に座った。
「じゃあ・・いただきます」
「どうぞ!」
座っても食べ始めない瑞稀を見て、こういう時は自分が先に食べるのかと思い手を合わせた。まずスプーンで、スープを飲む。味が濃すぎず、でも風味が強く味覚に強く感じられるスープに、思わず顔が綻ぶ。美味しい。
次にファークでパスタ。こちらも丁度良い食感で、モチモチしていて美味。
「・・・どう・・?」
いつだったか、前にも瑞稀は不安そうに自分の作ったモノの味を聞いてきた時があった。
あの時と同じ表情を見せる恋人に、拓斗は笑みを零した。
そして、あの時に言った言葉と同じ言葉を返した。
その返事を聞いた瑞稀は、またもあの時と同じ凄く嬉しそうな顔をした。
「良かったぁ!!」
「・・瑞稀も、食べようぜ」
「うん!!」