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THANK YOU!! 〜 After story 〜
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-3



「もう!びっくりしたよ!何の連絡も無しに居るなんて!」
「アハハ、驚かせたかったからな。」

夜の繁華街を抜けた一本道を並んで歩く二つの影。
一人はネイビー色のトランペットケースを左肩から斜めに下げている瑞稀。
もう一人は大きめのボストンバッグを持って、恋人である瑞稀に会いに来た拓斗。
二人は、瑞稀が住んでいるマンションに帰る途中だ。
あの後、なんとか野次馬から拓斗を無理やり離して練習場から見えなくなるまで全力疾走した瑞稀。
息を整えている瑞稀に、拓斗は笑いながら「お疲れ」と言葉をかけた。
そんな恋人を恨めしく見上げながらも頬を緩めていた瑞稀は皮肉を込めて「しんどかった」と言って見せた。
ただ、拓斗も瑞稀が嬉しく思っていることが分かっているので、瑞稀の頭をくしゃくしゃと撫でた。
そして、場所も場所なので瑞稀のマンションに向かおうということになって、今向かっている。
歩きながら小さく文句を言っている瑞稀だが、内心は嬉しかった。


「にしても、いきなり来ちゃって・・剣道大丈夫?今や時の人になってるけど」
「ん?あぁ・・今日からしばらくオフなんだ。一ヶ月くらい」
「・・長いね。だから・・来てくれたの?」
「あぁ・・。」

そこで言葉を濁した拓斗は、首を傾げて見上げる瑞稀をぎゅっと抱きしめた。
いきなりの出来事に、驚きながらも久しぶりに感じられる温もりに心が弾み、弱弱しくではあるが背中に手を回してギュッと掴んだ。
すり、と自然に拓斗の胸に頬を摺り寄せると抱きしめられる腕に力が余計に篭ったように感じて顔を上げる。
そこには、少しだけ赤い顔をしている最愛の人。

「・・我慢、出来なくなった。三年だけだったけど・・それでも、会いたかった」
「・・・うん。私もだよ。ずっと、会いたかった。」
「・・・瑞稀・・」

甘く、呼ばれた声と近づいてくる拓斗の顔にドキドキしながらも、そっと両腕で拓斗の胸を押した。その態度に拗ねた拓斗が不服そうに瑞稀の顔を覗き込む。
瑞稀は「公共の場所だからダメ」と真っ赤な顔で視線を泳がせた。
確かに人通りは少ないと言っても、普通の道。いつ、誰が来るかは分からない。
人目を気にした瑞稀は拓斗の腕から離れ、一歩先に進む。なおも不服そうにする拓斗へ振り返った。

「そうだ、拓斗。晩御飯とかまだだよね?」
「ん・・?あぁ・・そうだな」
「じゃあ一緒に食べよう!作るから!」
「え?でも、お前疲れてるだろ・・。俺は別に」

瑞稀の申し出に嬉しさが溢れるも、先程までオーケストラの練習をしていたはず。
一人分ならまだしもいつもより多い量を作るのは勝手が合わずに大変だろう。そう考え、遠慮しようとする拓斗。
それでも言い出したことを簡単に曲げるハズもなく。

「遠慮しない!材料は買い溜めしてるし、料理は好きだから!」

ね!と、無邪気な笑顔で言われてしまっては、断ることなど出来ずに頷いてしまう拓斗だった。


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