第一夜-9
ケガ。
琥珀にそれを指摘され、一瞬華月は狼狽えた。ここでバレる訳には行かない。
ごまかすように、華月は薄く笑ってみせた。
「俺なら心配いらないよ。…幼少からずっと剣に触れてきた」
一瞬だけ見せた青年の寂し気な雰囲気。ただ、心配ないと言った彼は笑顔を浮かべていて。自分の思い過ごしだろうか。
「さ、早く行きな?」
青年は自分の身を案じてくれているのか優しく声をかけてくれる。 なぜだか彼の笑顔を見ていると不思議に心が落ち着く。
やっぱり、兄さんみたいだ。