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魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

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16 ストシェーダ王都の朝-1


 ストシェーダ王都は、ジェラッド王都からはるか南西、城砦都市ゼノからは北上の位置あった。
 東と西、北と南をつなぐ主街道の交差地点で、百万を越す民が住み、その十倍の旅人が通過する。
 正方形の広大な敷地は城壁に囲われ、四つ角に高い塔がそびえ立つ。

 市街地は完璧な都市計画の下、碁盤の目状に区画整備されていた。
 左右にポプラの植わる美しい並木道が、それを区切っている。
 大陸で最も栄えるこの都市では、考えうる限りの商売が催され、あらゆる品が行き来すると言われている。
 東西南北から訪れる商人が、この都に持ち込まない品はたった一つ。

『雨具』

 この都に不要な品だ。
 四つの塔が放出する魔力で結界を張り、王都は全体を透明な膜で囲われた状態だ。
 そして結界は、敵を退けるのみならず、風雨や強すぎる陽射しも退けていた。
 もともと、この地は温暖で四季のはっきりした住みやすい気候だが、結界により王都の内部は常春に保たれている。

 雨がないので、街路樹の水やりや道の埃を流すには、人の手入れが必要だ。
 しかし上下水道の設備も整っているし、魔法使いたちは肉体労働の苦労をしらない。
 それは魔力を持たぬ蛮族の仕事だ。


 市街地では朝早くから、水桶やほうきを持った使用人達が、忙しく働いている。

 実質的に、大陸全土を魔法使いが掌握している現在、国によって多少文化に違いはあれど、基本的な支配体型は同じだ。

 一番身分の低い奴隷階級が、魔力を持たない蛮族。
 庶民階級が下位魔法使い。
 そして少数の高位魔法使いが貴族階級として君臨する、ピラミッド型の図式だ。

 ちなみに、中には当然、魔力が低くとも何か優れた能力を持つ者や、家柄に魔力の高低がそぐわない者も出てくる。
 彼らはひとくくりに『マーブル(輝く石)』と呼ばれ、上位と下位の中間に位置された。
 カティヤたち竜騎士などは、これに組する。
 まれに蛮族で成り上がる者もいる。

 しかし実はどの国でも、蛮族が人口の過半数をしめていた。
 基本的に両親の魔力が高いほど、子どもへ継がれる魔力も高まるが、魔力が高い者ほど、なぜか子どもが出来にくいのだ。
 複数の子をもつ蛮族の夫婦が多いのに対し、高位魔法使い同士の夫婦では、運良くできても一人。
 もし二人目が授かれば、国を上げて祝祭騒ぎだ。

 血統の純度を重んじるか、存続数を重視するか。

 どれほど研究しても覆せず、魔法使いたちを悩ませているジレンマだった。
 その結果、高位魔法使いは、近親者の正妻と下位魔法使いの愛妾を複数持つ。
 それでも年々、魔法使いと蛮族の数は開き、支配体制の三角型は、極端な末広がりを続けていた。
 



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