投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

魔眼王子と飛竜の姫騎士
【ファンタジー 官能小説】

魔眼王子と飛竜の姫騎士の最初へ 魔眼王子と飛竜の姫騎士 47 魔眼王子と飛竜の姫騎士 49 魔眼王子と飛竜の姫騎士の最後へ

16 ストシェーダ王都の朝-2


 ***
 
 カティヤが朝の訓練を終えたのと、ほぼ同時刻。
 ストシェーダ王都で、エリアスとアレシュは馬車の窓から早朝の市街地を眺めていた。

「こちらに参るのは、久しぶりですね」

 気楽に呟くエリアスの隣りで、アレシュはやや浮かない表情だ。
 カティヤとの別れは、鋭く胸に突き刺さっているが、それだけが原因ではない。

「まぁ、さすがに書簡では済まない大事だからな」

 相変わらずつかみ所のない側近の青年に、頷き返した。
 生真面目なエリアスは、日頃から職務中は、いつでも王宮に参上できる文官服と銀色マントの正装だが、今日はアレシュも正装だった。
 黒尽くめの服は相変わらずだが、金ふちの黒マントを追加して羽織っている。
 マントの留め具はやはり金のブローチで、トカゲの紋章が刻まれていた。

 城砦都市ゼノとストシェーダ王都は、魔法ゲートで結ばれ、馬で三日の距離も一瞬だ。
 使用するにはそれなりの魔力を要するし、狭いので荷馬車などは運べない。
 当然ながら厳しい検問もある。
 だがアレシュなら顔パス。そもそも魔眼を使えば、ゲートすら必要ない。
 ……にもかかわらず、アレシュが王都を訪れるのは、滅多になかった。大抵の連絡は書簡で済ませてしまう。

 今回は正式な訪問なので、仕方なくゲートを使い、王宮から迎えに来ていた馬車に乗っていた。
 朝日の中、黒と金の魔眼に、生まれ育った城が映る。

 ストシェーダ王都は全体の造りからも、神の箱庭と異名される、美しい都だが、王城の美しさは特に際立っている。
 初めて見る者は皆、息を飲んで言葉を失う。
 紺碧の尖塔をいくつも持ち、優雅な気品に満ちた白亜の城は、都の中心に建ち、広大な庭園と美しい水路に囲まれていた。
 城の花壇も美しく手入れされ、城内を飾る花が絶える事はない。
 特に有名なのは、四つの季節を一年中保つ、『四季の庭』だ。

 四分割された庭は、それぞれの区画で春夏秋冬を行儀よく守り、どの季節の花や果物が欲しくても、そこに行けば手に入る。

「……」

 視線を城から逸らし、自分を奮い立たせるよう、アレシュは頭を軽くふった。
 緋色の髪が揺れ、飾られている黒と金の小さな魔石に、馬車の窓から差し込む美しい陽光が反射した。




魔眼王子と飛竜の姫騎士の最初へ 魔眼王子と飛竜の姫騎士 47 魔眼王子と飛竜の姫騎士 49 魔眼王子と飛竜の姫騎士の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前