報告その1-1
〜第3話〜
翌朝。
目が覚めると妻の温もりはなく、既に起きていました。
時計を見ると10時過ぎでした。
もしかして昨日の事は全部ウソで夢だったんじゃないか・・なんて子供じみた事を考えながら、体を起こしました。
昨日の夕方以来、直接妻の顔を見ていない俺は、ドキドキしながら妻の居るリビングへと向いました。
「おはよう。もう起きてたんだ」
少しイラっとした口調で、お茶を飲みながらテレビを見ている妻に話しかけました。
「あっ、おはよう。昨日は遅くなって、本当にゴメンね」
ニコッと笑顔を見せる妻。
前日にも思いましたが、妻に何の非もなく、悪いのは俺。自分の妻を賞品にし他の男に抱かせた。
ちゃんと家に帰ってきた妻を抱きしめ、一言詫びても足りないくらい妻には悪いことをしたはずですが、妻が謝り、いつもと変わらぬ態度で接してくれました。
「昨日の事・・・気になる?」
立ち上がり、俺の分のお茶を入れテーブルに置いた妻は心配そうに覗き込んできました。
「そりゃ、気になるよ」
「聞きたい?」
「あぁ。嫌じゃなかったら、できるだけ詳しく聞きたいな」
普段はテーブルを挟んで向かい合わせで話をしていましたが、何故か隣に座り
「私のこと嫌いにならない?」
よほど不安なのか、顔を覗き込んで聞いてきました。
「大丈夫だよ。浮気したわけじゃないし、元々俺が悪いんだからさ。
本当は俺が謝らなきゃいけないのに。で、どうだったんだ?」
少し間を置いて、話し出しました。
車に乗ってから緊張で話ができなかった妻を向井さんが優しく話しかけてくれたそうです。
「大丈夫ですか?このままどこかで食事でもして帰りましょうか。賭けには勝ったし、前から奥さんを失礼ながら変な目で見てましたが、嫌がる女性を抱く趣味はありませんから」
誠実な話し方に覚悟を決めた妻は。
「いえ、大丈夫です。なんか主人以外の男の人と二人きりになるのは結婚してから初めてで。緊張しちゃって」
「嬉しいな。50を過ぎた私を男として見てくれてるんですね」
少し緊張のほぐれた妻は
「そういえば、主人がいつもお世話になってます。本当に麻雀が好きみたいで。
まぁ今回はそれがアダに?なったみたいですけど。これからも麻雀仲間でいてやって下さい」
「いやいや。あの日の博之くんは本当に好調でね。自分のやる気を出させる為に、わざと高いハードルを設けて勝負しようと思ったんですよ」
胸元の開いたドレス調のワンピースを着ていた妻は、チラチラと胸への視線を感じながら
「それで主人はあっさり負けたんですか?」
「ははっ・・どうだろうね。もしかしたら、奥さんを奪われたくないというプレッシャーが強過ぎてそれまでの力が出なかったんじゃないかな?」
「ふふふ・・向井さんって上手なんですね」
車中はそんな会話をしていたようです。
やがて家に着き車を停めると出発の時と同じように助手席のドアを開けた。
「さぁ、我が家へようこそ」と、お姫様扱いをしてくる向井さんにすっかり心を開き
上機嫌になったようで、「ありがとう」と微笑みながら、家に入っていきました。
向井さんは趣味のひとつである、珍しいお茶を煎れてくれたようで、
「わぁ・・美味しい。こんなお茶初めてです」
お茶を飲みながら他愛のない話をしばらくしていました。
30分程話し、会話がとぎれた瞬間に。
「奥さん。できればこのままずっと話をしていたいんですが、私もまだ現役の男です」
ずっと胸のあたりに感じていた視線。そして太ももにそっと手を置き、
「初めて見た時から、奥さんを一度抱いてみたいと思ってました。
ですが、それはただの夢。本当に実現するなんて思ってもいませんでした」
「そんな・・私今までそんな事言われたことがないから・・」
恥ずかしそうに目をそらした妻に、
「奥さん、ここじゃなくて、客間に布団を用意してますから」
と、妻を立たせ、いつも麻雀の時に使っている部屋にきちんと蒲団が敷いてあり、
部屋の隅には三脚で立てたビデオカメラも用意してたそうです。
部屋に入るなり、「あのビデオは?もしかして?」
「えぇ。もし奥さんが嫌でなければ・・もちろん他人に見せたりしないですよ。
私の趣味というか、思い出に。それから博之くんが見たいなら差し上げようかと。
博之くんから出された条件で、奥さんが嫌がる事はしないと約束してます。
もし奥さんが嫌ならば片付けます」
妻はすぐに返事はせず、しばらく考えたようです。
俺は思い出しながら話をしている妻の顔をじっと見つめました。
撮影を許可したなら、今の話に加え映像まで見ることができる。
散々想像した二人のセックス。向井さんはどのように妻としたのか・・
それを見た時、俺自身はどうなるのか・・
「それで?撮ってもらったのか?」
聞いてばかりだった俺はつい質問してました。
「なんか断れない状況っていうか、博くん見たいのかな?って思って」
妻の話を聞きながら、早くそのビデオを観たい気持ちを抑え、続きを聞きました。