〈囚獣・銭森麻里子〉-3
「嫌"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!!」
扉越しに聞こえる美津紀の悲鳴を背に、部下達はサロトの態度に愚痴ていた。
『なんだよ……あのガキが勝手に暴れただけだろうが…?』
『クソッ!じゃあ空いてる部屋にアイツを連れてこうぜ?憂さ晴らしにメッチャクチャにマワしてやろうぜ!!』
囚われの身の麻里子の予想を超える凌辱が、二人には襲い掛かっていた。
花嫁と公衆便所。
呼び名は違っていても、どちらも人間扱いとは程遠い……美貌は視覚的な興奮を呼び、性器と肛門は肉体的な快感を生み出す道具として使われるのみ……そんな性の地獄の大地に、またあの貨物船が到着した……。
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『随分と今回は来るのが早いな。ワシゃまだ美津紀で頭が一杯なんじゃが?』
貨物船の甲板で再会を果たした二人は、形式的な握手を交わした。
衣服を着ていても、精液の青臭い異臭が漂う……サロトは暴れる美津紀に膣内射精した後、あの部屋に鍵を掛けて放置してきた。
窓も無く扉は一つだけ。
後ろ手に拘束された花嫁に、逃亡など夢のまた夢……いくら『可愛い』だの言っても所詮は“性欲”が言わせてるだけで、新しい娘が来たとなれば興味はそちらに向く。
『いえね、美津紀の姉も刑事をしてまして……しつこく探って“商売”の邪魔をするんで連れて来たんですよ』
『……美津紀の姉、ねえ?』
サロトは興味のなさそうな顔をしていたが、鼻がヒクヒクと動いているのを専務は見逃さなかった。
大好きな美津紀の姉ならば、きっと美しいに決まっている。
専務が不細工な女を連れて来る道理は無いし、きっと香木に見合う逸材である事は間違いない。
だが、あまりに喜んだ姿を見せたら、値切るだけ値切られてしまうのは想像に易い。
だからサロトは興味の無い素振りをしたのだ。
『……ま、見るだけ見るか?』
『へっへっへ…是非とも見て下さいよ』
二人は船内に入り、あの部屋の扉を開けた。
その部屋の中心に、背伸びした猫のような格好で、檻の中に上半身を突っ込んだ女性がいた。
その鋭い眼光はサロトを一瞬たじろがせ、薄笑いを消し去り表情を硬直させた。