隣人は何を思う-2
深夜二時。
不意に隣人が私のベッドに乗っかると、私に掛かった布団を剥ぎ取って中へ入ってきた。
私のパジャマはゆるゆると脱がされて、下着までも脱がされて、私の恥態は露になる。
隣人の男は何か私に囁くと、私の乳房を優しく揉みほぐし、乳輪から乳首へと舌を這わす。粘ついた唾液に汚されて、それでも私の乳首はピンと立ち、ちゅうちゅうと吸われる。
「あ・・・はぁんっ」
腰が自然と浮いて、隣人の男はその浮いた腰を抱き締めるように手をまわす。片方の空いた手は私の陰毛を掻き分けて、陰部へと指を伸ばす。
くちゅりと、粘性のある液体が既に溢れだしていて、隣人の男はそれに気付くとにやりと口角を上げて笑い、私に何かを囁く。
「だってぇ・・・」
私は何とも甘い声で言い訳するも、隣人の男は構わずに言葉で虐める。
指先は私の割れ目に沿って何度もなぞるように刺激して、おかげでピチャピチャと婬水の音が耳に届く。
「あっ、はっ・・・ああんっ」
気持ち良い…。
「あ・・・もっと、もっとして」
彼氏とのSEXが随分ご無沙汰だっただけに、私の身体は性的刺激を普段より増幅させている。
隣人の男は既に私と同じように生まれたままの姿となっていて、ペニスは隆々と勃っていた。
私はその男の象徴を握ると自らの濡れ処へ誘導する。
妖艶に、淫らに、それを下の口に咥えこんで男の尻に手を回して引き寄せる。
ずぐぐっと中へ挿入ると私は嬌声を上げた。
「あっあっあっあっ!」
細い体のどこにそれだけの力が秘められているのか、分からない。
分からないままに、がむしゃらに腰を打ち付ける男の攻めに酔いしれた。婬欲にまみれて、肉欲に溺れて、隣人の全てを身体で受け止める。
「イく!イくぅ!」
男は私の膣内に精を放ち、私はそこで意識を失った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ーー夢、である。
枕元にある携帯電話の音で目が覚めた私は、通話を押す。
「ううん…もしもしぃ?」
「やけにエロイ声だね、オナニーでもしてた!?」
裕香のふざけた声が耳元に響く。無音空間の闇の中、裕香の声は外に聞こえるほどよく響く。キンキンと煩い。
「するわけないでしょ、寝てたの。それよりこんな時間に何よ」
「こんな時間って、まだ12時じゃん」
「そんなわけないでしょー」
と、寝惚け眼で時計を見ると針は十二時五分を指していた。
「あれ?」
頭が呆けている。変な夢を見たせいか…。それにしても嫌な夢だった。私が隣人の気持ち悪い男と交配する夢。
私はそれにレイプされるでもなく、自ら率先して隣人の男を貪っていた。どうかしてる。欲求不満なのだろうか。それにしたって相手くらいは選びたいところだけれど…。
「頭起きてないねぇ」
「もーしわけない」
「いやあのさ、これ思いついたから電話したんだけどさ」
「何よぉもう」
私は面倒くさそうに答える。凄く眠い、というか頭も体もまだぼんやりするからだ。
「愛弓あたしと電話する前に家から出たりした?」
「してないよ」
「お風呂入ったのはあたしと電話する前?した後?」
「えー、…電話する前だね。お風呂入ってからご飯食べてー」
「シャワー派?」
「シャワーだよ。ユニットバスだからお風呂溜めるのはちょっとねぇ」
「なるほどね…でもそうすると何か色々不自然なんだけど…出来なくは無いかなぁ?ってかだとしたら今頃ただで済んでないか。でも面白いから聞いてよ」
「何の話よ」
「だから、あの隣の奴がベランダに居たって話」
「もうあれは私の幻覚でいいでしょー」
携帯を耳に当てながら私は寝返りをうつ。
「いや…幻覚じゃなかったとしたら?」
「どういうことよ。だって本当にベランダには居なかったもん」
いつもと違う臭いが枕元から漂う。どこかで嗅いだような気もする。
「ベランダにも居なかったとしたら?」
「はぁ?意味が分かんないよ」
私はそっと布団を捲る。
「さっきの電話の時も夜だったでしょ?外暗いじゃん?」
「…うん…」
私はパジャマを着ていない。着ていたはずのパジャマを今は着ていない。
「外が暗い時に明るい部屋ってさ、『室内の景色を映す』じゃん?」
下着までも身に付けていない。『下』を確認すると、ぬるりとした液体が指に絡まる。
ギィ…と、暗がりの中、クローゼットの扉が開く。
「聞いてる?」
暗がりの中そいつは裸でーー
夢で一つに繋がったそれと全く同じサイズのものが私に狙いを定めている。
彼は舌嘗めずりをし、ベッドへぎしりと乗ってくる。
私の恐怖はいつのまにか興味へと変貌を遂げ、さっきまで挿入っていたであろう既に濡れそぼった秘裂を拡げて隣人の男に見せつける。
「そのままきて」と、声には出さずに口だけ動かして男に伝える。
男の肉がみっちりと中に詰まると私は「んぅ」と甘い声を洩らして充足感に満たされる。
「あいつさ、室内(ナカ)に居たんじゃね?」
「膣内(ナカ)に・・・いるよ」
「え?愛弓なに言ってーー」
携帯を切って放り投げると、お互いに求めあった。渇望しきった身体は潤い艶となって果てぬ欲の虜となる。
携帯の着信が鳴り響くも無視を決めて、ひたすらに乱れ男に跨がる。
精神病でもいい。
狂っていたい。
明日から退屈しないで済みそうだ。
汚ならしい隣人と唇を重ねながら、少なくとも私はそう思った。
物言わぬ隣人(あなた)は、何を思っているのかしら…
了