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隣人は何を思う
【ホラー その他小説】

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おめでとう-1

「良かったじゃん」
「おめでとう」
「いい男だな」

口々に男達は私に祝福の言葉を投げかける。

今年35歳を迎える私にフィアンセができた。
彼からのプロポーズはとてもロマンチックだったけれど、私は「少し考えさせて」と突き放した。
彼は待ってくれた。それは長い時間待ってくれた。
二度目のプロポーズで私はようやく決心したのだ。

今まで私と一緒になる男は必ず死んでいた。
その噂は明るみに出て、私は皆からさげまんというありがたくないあだ名を頂戴する。
それは段々とエスカレートしていき、死に神とまで呼ばれるようになった。
直接言われた事はもちろん無い。
陰口である。

現実、私が一緒になる男は必ず死んでいる。
私の幸福は相手の男の不幸になるのだ。
私はそれが嫌で、辛くて男と距離を置いていた。
その矢先に現れた男が、さっきプロポーズしてくれた男だ。
怖いから一回目は突き放した。でも真摯な態度に負けて、二回目で私は受諾した。
そう、もう《決心》した。


「良かったじゃん」
「おめでとう」
「いい男だな」

ホルマリン漬けの瓶に入った『男』達が私を祝福する。

このちょっと太いのが一番目の彼。
細長いのが二番目の彼。
色がちょっと黒めの三番目の彼。
最後にこの活きの良い新品の…ついさっき私にプロポーズした彼。

これでずっと一緒ね。
死んでしまったのは残念だけど、これで永遠に私と一緒。
仲間が増えて、前の彼達も嬉しそう。
私はこんなにいっぱいの男達に囲まれてとっても幸せ。
他の人間に陰口叩かれても大丈夫。
あなた達がいるから。

遠くでサイレンの音が聞こえる。

足りないならもっと仲間を増やしてあげる。
切り取るのだってそんなに難しい話じゃないわ。
あなた達だって経験したでしょ?心配しないで。


私は包丁を片手に、ぺろりと舌なめずりをしてから口を開く。

「実は今、気になる人がいるの」






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