生きる術-14
〈……出来…ました……〉
ポロは華飾りを繋いだ糸の端っこをクインに差し出した。
クインはそれをくわえて街道に泳いでいく。
「クイン〜こっちこっち」
街路樹に飾りを付けていたケイが手を振り、クインがそこまで華飾りを運んで行った。
ポロも外に出て街の飾りを眺める。
見た事がないくらいに華やかで綺麗で……何だが場違いなような気がして落ち着かなくなった。
「ポロ」
そんなポロにケイが声をかける。
ポロが目を向けるとニコニコ笑ってウインクしてきた。
「お祝いは皆でするもんだよ。場違いなんてあるわけ無い」
どうやら筒抜けのポロの思考が届いたらしい。
クインも宙返りしながら戻ってきてポロの首に巻き付いた。
『クッ(ポロが繋いだ華飾りが一番綺麗だ)』
ポロは大きく深呼吸して改めてケイを見る。
〈……はい……〉
その表情は笑ってこそいなかったが、晴れやかになっており、ケイは安心して作業を続けた。
祭りの準備を手伝いながら家事もこなしていると、家の庭がにわかに騒がしくなった。
何だろう?と思ってそちらに行ってみると、1組の男女を家族が囲んでいるのが見える。
男は長身で体格が良く、右目の部分は縦に大きく傷が入っており、それを黒い髪で軽く隠している。
片方しか開いてない左目は金色で、それを見たポロはギュウっと心臓をわし掴みされたような感覚になった。
女性の方はスラリとした長身。
艶やかなプラチナブロンド、吸い込まれそうな緑色の目……全身を包む雰囲気が暖かく安心感がある。
その2人を囲んだ家族達は矢継ぎ早に質問を浴びせていた。
「ステラ様の体調はどうだい?」
「大丈夫、産後も順調ですよ。双子を産んだ直ぐ後に次の子供の計画をたててました」
「髪は?目は?名前は?!」
「7日後まで待てよ」
話の内容からすると2人は城に関係している人物なのだろう。
ポロが家の中からその様子を眺めていると、ケイが気づいて駆け寄ってきた。
「ポロ、おいで紹介するよ」
ケイはポロに向かって手をそっと差し出す。
その手を握らずにポロは頷いて見せた。
未だに人との触れ合いが苦手なポロは、自分から人に触れる事は無い。
行き場を無くした手をにぎにぎしたケイは、仕方なくポロの先に立って彼女を2人の元へ連れて行った。
「アース、姫」
〈!?〉
2人に呼びかけたケイの言葉に、ポロはビキッと固まる。
今……姫と言わなかったか?姫って……姫?!
無茶苦茶動揺しているポロに、ケイはクスクス笑って2人を紹介した。