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三叉路 〜three roads〜
【学園物 恋愛小説】

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元カノ-1

その日は朝からどんよりとしたスッキリしない天気だった。


私達の街は寒くなるにつれてこのような厚い灰色の雲が空一面を覆い尽くす。


少しずつ、着実に冬が迫ってきていたそんなある日。


「ねぇ、これからカラオケ行かない?」


放課後になり、帰り支度を整えていた私に沙織が声をかけてきた。


「あれ? 今日は大山くんとデートでしょ?」


「うん、でも倫平がみんなでカラオケ行きたいって。なんか新曲覚えて結構上手に歌えたからみんなに聴かせたいんだって」


しばしば四人でカラオケに行く機会が増えるにつれ、大山くんの音痴っぷりが徐々に改善されてきたような気は確かにした。


以前、それを土橋くんに言ったら、


「あいつの音痴に慣れただけだろ」


とあっさり否定されたけど、実際上手になってきたかも、思うことが増えてきた。


沙織とデートしてもカラオケに行くことが多いらしく、大山くんは“猛特訓してる”と、得意気に話していたっけ。


でも、土橋くんが、


「二人きりでいちゃつけるからカラオケ行くことが増えたんだろ?」


と、ニヤリと笑ったら二人は真っ赤になって否定していて。


その慌てぶりから、図星なんだと思うとなぜか可笑しくなったことを思い出して、つい顔がにやけてしまった。


私は、特に予定もなく暇だったので沙織の誘いに二つ返事でOKした。


「よかった! じゃあ倫平達のとこに行こ」


沙織は嬉しそうにカバンを肩にかけると廊下に飛び出した。


混雑している廊下をぶつからないようにかきわけて、土橋くんのクラスであるA組前まで歩いていくと、見慣れた集団が廊下の真ん中で、大声で笑い合っている所。


七、八人の集団の中にあの二人も混ざっていて、楽しそうに笑っている。


以前なら、その集団の脇を通り抜けるだけでビクビク怯えていたものだった。


自分のことを笑っているような気がして、なるべく顔を上げないよう俯いて彼らの視界に入らないようにしていた。


それが今では、


「修、倫平。奥さんたちが来たぞ」


と、土橋くんの友人に冷やかされるまでに。


私は真っ赤な顔で冷やかした人達をジロリと見るが、土橋くん同様どこ吹く風と言った感じでニヤニヤ笑うだけなのだ。


土橋くんも顔色一つ変えずに、


「遅ぇよ、何手間取ってんだ」


と、私に向かって文句を言うだけで、特に友人に怒りも否定もしていなかった。


沙織は大山くんのそばに駆け寄り、


「ごめんね。うちの担任話長くって」


と、両手を合わせたら彼はニッコリ笑って、


「大丈夫」


と、頷いた。


沙織と大山くんが付き合ったときは、それはそれは大山くんは冷やかされっぱなしだったが、今では二人一緒の姿が当たり前になってしまい、友人達は彼を冷やかすことはほとんどしなくなった。


そのかわり、今ではなぜか土橋くんグループの人達は私を冷やかすようになってしまったのだ。


きっと、大山くんよりも私の方がからかいやすいのだろう。


そのことを土橋くんに抗議しても、彼は聞こえないふりをしたり、冷やかしに悪のりするばかり。


結局、友達の冷やかしを否定することは最後までなかった。






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