月の光と都会の光-8
その後、チェックアウトして東京を散策。
2人とも足が痛くなるほど色々見て回って、夕方の便で福岡に戻った。
飛行機では大輔くんは寝てたけど、私は恐怖の方が勝り、最後まで眠れなかった。
福岡に着くと、大輔くんの家の近くでご飯を食べた。
大輔くんはうちまで送ってくれると言ってくれたが、さすがに疲れてるだろうから丁重にお断りし、東京に付き合ってくれたことのお礼を言った。
すると別れ際、小さな袋を渡された。
「帰ってからのお楽しみ」
そう言われたので家まで我慢したが、気になって仕方がなかった。
小さな黒い袋の中には更にベージュの袋があり、可愛い赤いリボンでとめてあった。
家に着くと、旅の疲れがどっと出る。
「つかれたー」
誰もいない家に私のひとり言だけが響く。
この2日、ずっと大輔くんと一緒だったし、たくさんの人と過ごしたからか、家の中が特に静かに感じる。
ある程度の片付けをして、温かいお茶を淹れる。
大輔くんからもらった袋を取り、中身を確認する。
黒い袋から取り出すと、私の好きなアクセサリーブランドの袋が出てきた。
ピンときた。
「聡からもらったのはしにくいから…」
先週おでんを食べに行った時、大輔くんに言った。
いつもしてたから、それ以外のネックレスは持っていなかった。
けど、別れたからつけるのも気が引けた。
愛着はあったから、アクセサリー入れに大切にしまっている。
大輔くんは私がこのお店が好きなことは知ってる。
雑誌で新作のチェックしてるのは知ってたし、前にも話したことはあるから。
だから、多分ネックレスだと思う。
そっと箱を取り出し、中を開ける。
中からは、私が一番欲しかったデザインのネックレスが入ってた…
何で分かったんだろう?
このブランドの話はしたことあるけど、どれがいいとかは話してない。
でも、顔がにやけてしまう。
大輔くんが買いに行ってくれたんだと思うと、ホントに嬉しかった。
大輔くんにメールを送る。
明日からつけていくよって送ろうとして手が止まる。
ふと気づく。
私…彼女じゃないのにこんなのもらっていいのかな?
好きな人とかはいないっぽいことは前言ってたけど。
携帯とにらめっこ。
でも折角もらったし、ありがたく使わせてもらうことにする。
そのままメールを作って送信した。
ネックレスを手に取り見つめる。
彼女かぁ…
大輔くんの彼女とか、幸せだろうなぁ。
そう思ったらちょっと切なくなった。