幸子 第12話-1
お仕置き
「ねぇ、美奈ちゃんから電話来たんだけど」
帰ってきた夫に話しかけた。
美奈は夫の妹、幸子より2っ上の30才。
気ままな独身生活を送っていた。
「うん、幸と温泉行きたいって、俺にも昼間電話来たよ」
「そっちにも電話してたんだ、無料の招待券貰ったからって言ってたよね」
美奈の段取りの良さに、幸子は笑いながら言った。
「で、どうする?Y市に行くのは再来週だしな、来週ならいいんじゃないの」
相手が妹だし、一泊の予定だから、夫も安心している。
「ほんとに?いいの?やったぁ。久しぶりに美奈ちゃんとの旅行だぁ」
無邪気に喜ぶ幸子を見て、夫は笑っていた。
週の中日、水木にしたけどいい?と美奈から電話があった。
専業主婦の幸子には曜日は関係ないから、すぐに賛成した。
夫を送り出した後、明日の旅行の事を考えながら掃除をしていた。
風呂場洗面所と掃除を終わり、ちょうど玄関を掃除していた時に、チャイムが鳴った。
「どうしたの?忘れ物?」
幸子はドアを開けて言った。
「わっ!」
「きゃっ!」
そこに立っていたのは警官だった。
全裸で玄関を開けて出迎えた幸子も警官も、唖然と見合ったままで、立ち尽くしていた。
「きゃっ!」
幸子はもう一度、声をあげると胸と股に手を当ててしゃがみこんだ。
「あっ。。。もうしわけありませんっ」
「あのっ、住民調査をしていまして…その…中に入って、 ドっ…ドアを閉めていただけますか」
回れ右をして、幸子に背を向けたまま、警官もしどろもどろに言った。
「ちょっと待ってて下さい」
幸子はそう言うと、とりあえず脱衣所に合ったバスタオルを巻き付けると玄関に戻った。
「あの…あの…すみませんでした。てっきり夫かと思って…」
恥ずかしさに全身を真っ赤にした幸子が、ドアの隙間から言った。
「えっ…いや、私の方こそ失礼しました」
幸子以上に茹でダコみたいなった警官が、まだ背中を向けたままで言った。
「この辺は犯罪は少ないですが、どんな人間がいるかもわからないので、ドアを開けるときは十分に注意してから開けて下さい」
お互いにしどろもどろで一通りの聞き取りが終わってから、警官がそう言った。
「はい…ほんとに。。。ビックリして…あの。。この事は…」
「いえっ、私は何も見ていませんので、はいっ!」
「でっ。。では失礼いたします」
警官は右手と右足を一緒に出しているような、ギクシャクした足取りで歩いて行った。
「あぁーーーーーービックリしたぁ」
警官が居なくなった後、幸子は思いっきり吹き出して笑った。
露出しようと思ってするのと、そんな事これっぽっちも考えていない時に見られるのでは、心の準備が違うし、気持ちの持ちようがちがう。
それも相手がおまわりさんとくればなおさらだった。
(でも、おまわりさんで良かった。これがもし隣の人とかだったら、後々がめんどくさかっただろうなぁ)