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インスタント・ラバーズ
【痴漢/痴女 官能小説】

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グッド・モーニング-6

 その瞬間、わたしはセミロングの髪の毛をむんずと掴まれて、顔を強引に上に向けさせられた。
 顔の方向には、男性の鬼のような顔があった。
 体に震えが走る。わたしは、場違いにもその男性の顔が最高にセクシーな表情だと思っていた。

「勝手放題言いやがって! こんな人気のない場所で、どうなるか分かって言ってるんだろうな? ああ?」

 おそらくは普段は真面目な好青年が、その仮面をかなぐり捨てていた。
 誇りを傷つけられた青年は、その報復とばかりに今にもわたしを犯しそうな様子だ。
 人は誇りを傷つけられたら、やはり怒って意志を表示すべきなのだとわたしは思う。
 こんな状況なのに、体のどこかが甘く疼いている。
 この青年のことを、わたしは少し好きになりかけているのかもしれない。

「ご、ごめんなさい……あなたを傷つけるつもりじゃなかったの。ただ、ちょっと好奇心で聞いてみたくて」
「残業ばかりで、女どころじゃない。だから、最近セックスなんてしてないさ。それの何が悪い?」
「わ、悪くはないわ……ただ、可哀想だなと思って」
「ああ? してなかったら、可哀想なのかよ? そういうお前はどうなんだ?」
「そ、それなりには……してるわ」
「ハッ! そうかよ。ちょっと美人だからっていい気になりやがって。惚気てんのかよ?」
「別に……セックスなんて、誰でもするような普通のことでしょう?」
「そうかもな。じゃあさ、その普通のことを、俺とやってみようか?」

 男性の一人称が僕から俺に変わって、眼の色が昏く淀んだように見えた。
 相変わらず、わたしの髪を掴んで、恫喝するようにその昏い目でわたしを睨みつけている。
 そうよ。今すぐにでも、あなたと、ヤリたいのよ。
 でも、本当の気持ちを言うのは、まだ早いという気がした。
 もう少し、この危険なやりとりを愉しんでいたい。
 わたしにとっては、これこそ前戯と言ってもよかった。
 疼く体をまだよと心の中で抑えこみながら、わたしは一人、芝居を続ける。


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