第3話 陵辱の始まり(前編)-8
「いやっ、やめて……触らないで下さい……」
紗希は蛇沼の手を制止しようとする。
口調には男に対する嫌悪感が現れていた。
しかし、蛇沼には紗希を気遣う様子もなかった。それどころか、
「そんなこと言って、本当は奥さんだって、こういうの嫌いじゃないんでしょう?」
下劣な言葉で揶揄するのだった。
「そんなことありません……私には夫がいるんです」
紗希の頭は、自分の軽率な行為でこんな事態を招いてしまい、夫への罪悪感でいっぱいだった。
「その旦那に満足させてもらってないんでしょう?私が旦那に代わって奥さんを満足させて上げますよぉ。ウヘヘヘ」
蛇沼の遠慮のない手が紗希のセーターの裾を捲り、中へと侵入してくる。
「いやぁっ!」
男の腕の中でもがき、侵入を許すまいとセーターの上から手を抑えつける紗希。
「おやぁ、いいでんすかぁ、そんな態度で。そんなんじゃ、写真は返せませんよぉ」
「そんな……卑怯者……」
「大人しそうな顔して、こんなにスケベな身体をしている奥さんが悪いんですよぉ。しかも、オナニーまで見せつけちゃって。本当は、こういう事をしたくて誘ってたんでしょう?」
「違います。私、そんな女じゃありません……」
「いつまでも、つべこべ言ってないで。私もそんなに気が長い方じゃないんですよ」
蛇沼が声のトーンを落とし、目を不気味にギラつかせる。
紗希の身体が強張った。
紗希にとって、男性とはいつでも優しく、愛情を注いでくれる存在だった。
初めて目にする男の卑劣さと厭らしさに、紗希は恐怖と嫌悪感を覚える。
こんな男に貞操を穢されるのかと思うと、激しい絶望感に襲われた。